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『ストロベリーシェイク』 林家志弦 【日刊マンガガイド】

2015/06/17


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『ストロベリーシェイク』
林家志弦 集英社 \1,250+税
(2015年5月19日発売)


芸能事務所所属のタレント・橘樹里亜とその後輩・浅川蘭。2人はともに16歳。

ページを開いた最初から、いきなり恋に落ち、無防備な蘭への樹里亜のアプローチが始まる。
蘭は樹里亜の優しい指導に心を任せ、ついつい甘えてしまう。
蘭の上目遣いに、樹里亜の野獣が心のなかで暴れ狂う! そこにマネージャーのツッコミ炸裂スパーン!

初出は2006年。「百合姉妹」「コミック百合姫」に掲載されていた、ガールズラブコメディだ。
今でこそ「百合」といえば、恋愛だけでなく、女の子同士の関係を楽しむ広い単語としてアニメ・マンガファン界隈定着しつつある。しかし2000年前半は「百合」の線引、定義で多くの作家が悩んでいた時期だ。

00年代前半の『マリア様がみてる』の大ヒットで、「百合」作品には女学園ものが非常に多かった。数多くの傑作がそのなかから生まれたものの、「百合」作品自体は、「BL」作品と比べるまでもなく少なくない。
また繊細な「ガールズラブ」「百合」にどう切りこめばいいか、多くの作家が悩んでいる。

そのなかで描かれた『ストロベリーシェイク』は革命だ。
女の子同士の恋愛・性愛は「笑い」にしてもいい。もっとライトに「百合」を楽しんでいい。
せつなさや愛しさもいいけれど、女の子が女の子見て鼻血ブーでもいいじゃないか。

作中に出てくる女性キャラクターはみんな、女性が好きだ。
マネージャーたちも女性が好き。「ZLAY(ズレイ)」は、女の子しか愛せない女性バンド。同期タレントは美容師の女性が好きで通っている。
「ZLAY」のひとりはこう語る。
「女の子の脳はファンタジーで出来てるの より美しいものを追い求めるのは自然の理 つまり同程度の格好良さなら 女子は男より女を選ぶということよ!!!」

百合を楽しむ勢いと、「これでいいのだ」感が産んだ作品。作者も「一発芸のつもり」で描いたと言っている。 しかし、間違いなく今の百合ブームに火をつけ、百合の定義の裾野を開いた作品のひとつが、このマンガ。
「これでいいのだ」のパワーは、今読んでも十二分に力強い。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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