『マジカル・高橋葉介・ツアー 高橋葉介初期傑作短編集』
高橋葉介 復刊ドットコム \2300+税
（2015年5月30日発売）

おどろおどろしくも幻惑的、ゾクッとするけどどこかユーモラス。
1977年に「マンガ少年」でデビュー以降、現在も怪奇・ホラーマンガを精力的に発表し続ける高橋葉介。
その初期作品をセレクト、カラー口絵や当時同人誌に寄稿された作品なども収録した豪華作品集が刊行された。
いやぁ、『ルパン三世・カリオストロの城』雑感や、ヨースケ先生の手による『未来少年コナン』のヒロイン・ラナちゃんまで見られるとは、なんたる僥倖!!

筆による独特な初期の描線は、ともすれば作品をマニアックに見せてしまいそうだが、洒脱なセンスと著者の備え持つ守備範囲の広さがそれを阻む。
不気味さも不条理も、その魅惑の世界を伝えようというサービス精神に満ちているのだ。

美少年、美少女キャラたちの小悪魔的な魅力もたまらない！
ライフワークとして描かれ続ける『夢幻紳士』の少年探偵・夢幻魔実也（むげん・まみや）といい、『ミルクがねじを回す時』のエプロンドレス美少女・ミルクといい、ひとコマひとコマに見惚れてしまう。

時代も、どこの国の物語かもあきらかではない……しかし不思議な懐かしさと艶めかしさがあふれる作品たちは“ヨースケワールド”としか言いようのない空間を展開している。
マンガ好きにはぜひ手元に置いてほしい一冊だ。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」