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『晴れのちシンデレラ magical』第1巻 宮成楽 【日刊マンガガイド】

2015/06/27


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『晴れのちシンデレラ magical』第1巻
宮成楽 竹書房 \580+税
(2015年5月30日発売)


主人公・春日春(かすが・はる)は、お嬢さま学校で「春姫」と呼ばれ、だれからも慕われている。
しかし彼女には秘密があった。じつは春さん、つい3年前に祖父が油田を掘り当て一攫千金するまでは、田舎で超・極貧生活を送っていたのだ。
幼少期から野山を駆けまわり、獣と戦い、野菜を採って自給自足していた過去がつくり上げた野性のパワーや貧乏性な習慣をことあるごとにうっかり発揮してしまう春さんだが、周囲の好意的な解釈によりますます優秀な才媛として憧れを集めていく……。

というのが、コメディ4コマ『晴れのちシンデレラ』の大筋だ。
月刊誌「まんがライフMOMO」を中心に、「まんがライフ」系列の雑誌で連載中の本編は現在、第7巻まで刊行。そして、4コマではなくストーリーマンガの形式で「まんがライフSTORIA」に掲載されているシリーズが、今回単行本としてまとまった次第である。
番外編ではあるが、上に書いた大筋さえ知っていれば本巻から入っても充分楽しめるだろう。

天蓋つきのベッドで眠るときに寝言でかわいく「ショコラ」と言ってみたい!と願いながら実際は「じねんじょ(自然薯)」と言ってしまう一幕にコメディ部分のコンセプトが集約されている。
そして、落とす方向のコメディで終わらないのが本作の良心。
春さんはたくましすぎる自分がお嬢さまらしくないと悩むが、その人柄や能力の高さは、憧れを受けるのにふさわしい。
それを保証する役まわりで、三条さんというお嬢さまが登場する。
身体が弱く、上品で、生まれ育ちがいい。春さん視点では彼女こそ本物のお嬢さまだが、その本物から惚れこまれる春さんは、生まれではなく人としての格、器において“本物”なのだ。
そんな2人が互いに「あの方のような本物のお姫さまになりたい」と憧れのクロスカウンターを交わすハートフルな光景が、本編・番外編とも重要な見どころになっている。

その際押さえておきたいのは、春さんの“本物のお嬢さま”ぶりは、むしろ貧乏時代に育んだものという点だ。
春さんは自分の貧乏性には引け目を感じているが、貧乏だった過去自体は恥じていない。
ボロ家に暮らしながらわずかなものをやりくりして母弟と喜びや思いやりを分かちあった思い出は、春さんにとってむしろポジティブな引き出しになっている。
それこそ、作品の題名が「晴れ」のちシンデレラ、となっているゆえんであろう。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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