『横山光輝超絶レアコレクション』
横山光輝 潮出版社 \200+税
(2015年6月5日発売)
『鉄人28号』『伊賀の影丸』『バビル2世』『魔法使いサリー』『水滸伝』『三国志』等々……代表作多数、しかも少年マンガから少女マンガ、そして歴史ものと幅広いジャンルで活躍した“マンガの鉄人”のレア作品集。
収録作品はいずれも70年代前半、学年誌や週刊誌に発表されたもので、すべて単行本初収録だ。
今はなき月刊誌「中一時代」に連載された「オレとおまえ」は、短い命を見つめる男子主人公のひたむきさがまぶしい青春譚。
苦悩しつつも男らしさと清いファイトを失わずにあろうとする主人公のまっすぐな瞳が胸を打つ。
「城と太陽と名探偵」は、巻末に解説を寄せているみなもと太郎(漫画家/マンガ研究家)も“こんなマンガがあったとは”と驚く、梶原一騎(原作)とのタッグ作品だ。
お蔵出しの極めつけは、自伝的作品「まんが浪人」。
高校卒業後、漫画家として出発するまでの道のりを描いたものだが、数多の“漫画家マンガ”にありがちな熱血風味は皆無。
しかし、もちろん転職を繰り返すなか、苦悩は山ほどあっただろう。そこは敢えて描かない……というか、そうした表情を表に出さないのが横山光輝という人なのではないか。
外から見る分には淡々と、しかし着実に、頑固に己の道を探る。そんな若き日の横山光輝の姿に、横山作品の美学を見る思いである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」