『中まで優しく掘って』
赤星ジェイク コアマガジン \539+税
(2015年6月3日発売)
まずそのタイトルに、二重の意味でニヤリ。
赤星ジェイクの最新作は、幻の珍味“赤トリュフ”を狩るトリュフハンター・シラトリが、得意先のオーナーでシェフのコダカを意識するようになるという物語だ。
相手は亡き父の友人で、しかも同性である男。
そこにおいてタイトルは、『中まで優しく掘って』。トリュフ掘りとベッドで行われる行為の両方を暗示させるものになっているが、恋する男の気持ちと生理もまさに優しく掘り下げた作品となっている。
コダカの残したストールを手に、その匂いに、肌触りに感情も肉体も昂ぶらせてしまうシラトリ。
ポップなアニメーションと優しげなイラストのあいだをいくような著者の画は、どこかファンタジックで温かな世界観を作り出しているが、そのなかでも生々しさは捨てていない。シラトリの抱く男の欲情にもきちんと触れて見せている。
それは、ただのサービスシーンではない。それほどまでにシラトリは、コダカに惹かれて彼を心から求めているのだ。
、だれかを──同性であるだれかを好きになり、とまどいながらも心も身体も熱くせずにはいられない青年。著者の優しい作風も相まって、だんだんとシラトリの姿がいとおしくも見えてくる。
今作ではトリュフ、前作『恋カラメルのレシピ』ではプリンを扱っていた赤星ジェイクだが、その作品で愛でて味わうべきは、焦れて火照りながら恋する男たちなのだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。