このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

『佐藤史生コレクション ワン・ゼロ 愛蔵版』第1巻 佐藤史生 【日刊マンガガイド】

2015/07/11


SatouShioONEZEROaizou_s01

『佐藤史生コレクション ワン・ゼロ 愛蔵版』第1巻
佐藤史生 復刊ドットコム \1,850+税
(2015年6月16日発売)


ファンタジー大作『夢みる惑星』と並び、佐藤史生のもうひとつの代表作と言われる『ワン・ゼロ』が、ついに復刊となった。じつに喜ばしいことだ。

80年代半ばに少女マンガ誌に連載されてはいたが、内容は生粋のSF。
そのサイバーパンク的世界はじつに魅力的で、またニューエイジの要素も濃く、2015年の今、あらためてページを繰っても、その色あせないおもしろさに感服する。

ときは20世紀末の東京。
カルト・ディスコなる、愛好家たちが集う会員制クラブが乱立している時代。
高校生・明王寺都祈雄(みょうおうじ・ときお)はそんなディスコ荒らしで、会員証なしであちこちに潜りこむ常連。

そんな彼に、コンピュータ・フリークで優等生の馬鳴(めみょう)が、メディテーション(瞑想)カルトの店である「薔薇門」に入りたいといってくる。
破格の入会金が必要な「薔薇門」だが、都祈雄は偶然にも招待カードを手に入れていた。

「薔薇門」を訪れた都祈雄の前に現れる美少女・摩由璃(まゆり)。
彼女は、インドで消息を絶った都祈雄の父の娘で、都祈雄の腹違いの妹だ。
明王寺の家系には、目に見えないものを見る能力者が時たま生まれるが、摩由璃はその能力の持ち主だった。
彼女が、明王寺家の守護尊である孔雀明王像を前に儀式を行い、真言を発声した時、思いもよらないことが起こって――。

物語の謎が徐々にひもとかれる内に、『神(ディーバ)』と『魔(ダーサ)』の壮絶な戦いの幕が、すでに上がっていることに気づかされる。
第1巻で明かされるのはまだその断片とはいえ、ひとつ、またひとつと情報が増えるたびに、次が知りたくて仕方がなくなる。

3D映像の立体曼荼羅、自己学習型のコンピュータ、アートマン、カリ・ユガ……このマンガは、書きつくせないほどの魅力的なタームに満ちている。
現在の私たちの生活、また昨今のSF映画やアニメを想起させる内容が、すでに80年代なかばの時点で描かれていたのだ。 優れたSF作品はえてして予知の力を持つが、この『ワン・ゼロ』もまさにそのひとつだと言えよう。

何度繰り返し読んでも新たな発見が生まれる、深い洞察に満ちたこの作品。
少しでも多くの人の目に触れてほしいと願う1冊だ。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

単行本情報

  • 『佐藤史生コレクション ワン… Amazonで購入
  • 『佐藤史生コレクション 金星… Amazonで購入
  • 『佐藤史生コレクション 夢み… Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング