『King Legend 超人ロック』第1巻
聖悠紀 KADOKAWA \590+税
6月9日は六(ろく)、九(く)のどストレートな語呂合わせにより「ロックの日」となっている。
記念すべきが何の「ロック」かも様々で、音楽ジャンルのロックもあれば人造鉱物繊維の「ロックウール」もあり、日本ロックセキュリティ協同組合が制定した「我が家のカギを見直すロックの日」なんてのもある。
そのなかでもマンガ的に大事なのが、1967年に同人誌で発表されて以来、様々な商業誌を渡り歩き長きにわたり連載されてきた聖悠紀のSFマンガ『超人ロック』の存在そのものをファンが祝う「超人ロックの日」なのである。
商業誌での連載開始は1977年だが、同人誌時代も含めると、かの『ゴルゴ13』(1968年連載開始)を超えるという超ロングラン作品。
人類が宇宙に進出した近未来の銀河系を舞台に、不死に限りなく近いエスパーである主人公・ロックが永遠とも言える時の流れのなかで様々な人と出会い、いろいろな事件に巻きこまれていく壮大なドラマ。描かれている年代も西暦2049・2050年、そして宇宙歴0001年~1380年と大河ドラマ的に壮大かつ悠久だ。
ロックが生きる時代も、エスパーの存在が信じられない時代からその異能が尊敬を集めている時代、あるいは残酷な差別を受ける世界など、時が移ろえば舞台も移り変わる。
いずれの時代でもロックは人類のはかない生命を愛おしく思い、戦争から逃れられない愚かさに憤り、それでも人類を信じようとする。
ひとつの時代にまつわるエピソードが単行本1巻から複数巻で完結する形式なので、どこから読んでも楽しめるが、ここは発表時に時空を前後しながら展開していた物語を、時系列順に並べて収録した完全版の「King Legend」シリーズをオススメしておきたい。
ちなみにこの作品、冒頭で“様々な商業誌で連載された”と書いたように、悠久の時をゆく超人ロックさながらに、いろんな雑誌を渡り歩いてきた。
「ランデヴー」、「週刊少年キング」、「月刊OUT」、「月刊コミックバーガー」、「月刊MEGU」、「季刊ZERO」、「月刊ヤングキングアワーズ」、「ヤングキングアワーズプラス」、そして現在『超人ロック ラフラール』を連載中の「ヤングキングアワーズ」と『超人ロック ドラゴンズブラッド』を連載中の「月刊コミックフラッパー」。
現在連載中の雑誌以外がすべて休刊となっているのも、超人ロックの普遍性と人の世のはかなさを感じさせてくれます。諸行無常。
<文・富士見大>
編集プロダクション・Studio E★O(スタジオ・イオ)代表。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。