『幕末狂想曲RYOMA』第3巻
外薗昌也 リイド社 \524+税
1867(慶応3)年7月13日(旧暦法の6月12日)、土佐藩の脱藩志士・坂本龍馬は長崎から上洛中の藩船・夕顔丸のなかで「船中八策」を起草した。
これは、前年に薩長同盟を締結に導き、続く第二次長州征伐で幕府軍を撃退した倒幕派の牽引力ともいうべき龍馬が、新国家体制の基本方針として提示した策で、「政権を朝廷に返還する(大政奉還)」や「上下両院の設置(議会政治)」、「有能な人材の政治への登用」などの8つの方針を伝えている。
こうして見ると、あらためて龍馬の近代的感性に驚かされるが、マンガにおいては、彼の先進性はさらに神話的に描かれる。
外薗昌也の『幕末狂想曲RYOMA』がそうだ。
本作において龍馬は、幕府の存亡をめぐって国を二分しようとする内乱の背後に、世界統一を目論む“秘密結社”の存在を認める(トーマス・グラバーも所属していたアレですな)。
組織の干渉をはねのけようと龍馬が「戦もやらず 刀も鉄砲も使わんと わしが 頭だけで幕府を 倒しちゃるき!!」と(見開き一発で!)言いつつ、出した切り札がこの「船中八策」だった。
最終第3巻では、ついに池田屋事件が発生、龍馬たちは血みどろで志なかばで敵刃に倒れると思いきや、とんでもない秘策で運命に立ち向かう。
どんな展開かは作品をお読みいただくとして。
幕末という時代で自由に創作の翼を広げた著者の感性は、非常に意外な人物が鞍馬天狗だったという『鞍馬天狗』とともに、荒唐無稽だが爽快かつ燃える傑作を生み出した。
ホラーじゃない外薗昌也もまた、いいものです。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。