『なでしこシュート!』
神崎裕 講談社 \419+税
7月17日は、サッカーの2011年FIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会で日本代表(なでしこJAPAN)が初優勝した日である。
2015年のカナダ大会では決勝でアメリカ代表に敗れて大会連覇はなしえなかったものの、2大会連続での決勝進出は歴史的な偉業と言っていい。
新川直司『さよならフットボール』や若宮弘明『蹴球少女』、いのうえ空『マイぼーる!』など、最近は女子サッカーを題材にしたマンガ作品も増えてきた。映画にもなった吉田秋生『海街diary』でも、四女のすず(映画で演じるのは広瀬すず)はサッカークラブ「湘南オクトパス」にて活躍。女子サッカーが、彼女の進路に大きく関わってくる。
しかし、なでしこJAPANそのものを題材にした作品といえば、神崎裕『なでしこシュート!』だ。
本作は日本サッカー協会が協力しているため、実在の選手や監督が実名で登場するのが特徴。
主人公の上田梨々は中学生モデルだが、ひょんなことから女子サッカーのクラブチームに参加するようになり、日本代表の佐々木則夫監督の目にとまり、15歳ながら日本代表に抜擢される。
東アジア選手権の韓国戦では、途中投入で代表初キャップとなるものの、思うように体が動かず、試合途中で交替させられてしまう。
途中出場、途中交替というのは、サッカーの試合ではよほどの大怪我でもしないかぎりにはほとんどありえず、実際にあるとしても「懲罰」の意味合いが強い。
落ちこむ梨々だが、澤穂希選手や大野忍選手が励ましてくれて、梨々は奮起する。バロンドール(世界最優秀選手)になった澤選手や、カナダ大会でも決勝トーナメントの全試合でスタメン出場した大野選手がしれっと出てくるところが、このマンガのすごいところだ。
ちなみに、15歳でフル代表に選出されるのは、マンガならではの荒唐無稽さと思うかもしれない(大空翼も15歳で奥寺ジャパンに選ばれている!)。
しかし、現実の世界でも、澤穂希選手が初めて代表に呼ばれたのは15歳の時。また、なでしこリーグが創設される前の女子サッカーリーグ(JLSL、L・リーグ)時代に鈴与清水FCラブリーレディースで活躍した女子サッカー界のレジェンド・長峯かおり選手も、やはり15歳のときに代表に選出されている。
長峯-アンデレンのホットラインは、今でもサッカーファンの記憶に焼きついていることだろう。数多くの先人の活躍が、今日の「なでしこ」を支えていることは疑いようのない事実である。
さて、現実のなでしこJAPANは、カナダ大会の出場登録23名中17名が、前回大会の経験者だった。さらなる進化をとげるためには、世代交代が求められるだろう。
準々決勝のオーストラリア戦で決勝ゴールを決めた岩淵真奈選手や、それこそ『なでしこシュート!』の上田梨々のような若い力が必要となるに違いない。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama