『桃色メロイック』第7巻
福田晋一 少年画報社 \590+税
(2015年6月22日発売)
いってしまえば妹萌えマンガなのだけれど、いやぁ、そんじゃそこらの妹萌えマンガじゃない。
主人公の四宮(よつみや)大和は、とにかく女子高生の妹・まさきのことが大好き。
すでにそれは妹を思う気持ちを越えていて、本気で欲情しているうえに、本気で結婚したい(!?)とまで思っている始末だ。
いっぽうのまさきは、そんな姉の思いにも自分のかわいさにも無自覚の天然で、大和に恋人のように甘えてみたり、すねてみせたり……。
そんな2人と周囲の人々のドラマをコミカルに描いているのが、福田晋一『桃色メロイック』。
何がすごいって、まさきに対して大和は頻繁に勃起してしまうというところまで描いていながら(!!)、それが決して変態的にも背徳的にもはなっていないという点。
じゃあ思いっきり笑えるギャグになっているかと言うと、それもまたちょっと違っていて、大和のそのある意味での振りまわされっぷりと暴走っぷりが、なんともかわいらしいのだ。
その本質的な魅力は、妹萌えではなく、兄萌えなのでは!? と思わされてしまう本作。
建設現場で働く大和は、まさきへの溺愛ぶりをのぞけば、いたって男らしいキャラクターでもある。イケメンという設定にこそなっていないが、やんちゃさもあれば義理堅さもある。
周囲の仲間たちからはバカにされながらも、まさきの親友の愛梨や、元クラスメイトで現在はまさきの高校の先生となっている春菜に想われている。
兄でアニキな大和のカッコよさとダメっぷりでこそ楽しむという意味では、『桃色メロイック』は新種のアニキ萌えマンガなのだ。
さて、最新第7巻では、大和と飲みに行った春菜が、酔った勢いでついに大和に告白。しかも自分から唇を重ねてしまう。
そのとき、大和が取った行動は……。
大きく動きだしたドラマと不思議なおもしろさが入り混じる、この先ますます注目のマンガ。
しかし考えてみれば、ちょい悪のアニキ路線と妹萌えのセクシー路線の融合って、これほど「ヤングキング」らしいヤングキング連載作品もないかもしれない!?
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。