『かんなぎ』第10巻
武梨えり 一迅社 ¥574+税
(2015年7月27日発売)
ついに仁がナギさまに告白した――――!
2006年連載スタート、途中著者のクモ膜下出血による休載があったものの、じつに10年近い歳月で描かれているこの神様との同居物語もついに佳境へ。
昨年刊行された9巻では「当初の予定では10巻で終わらせる」とのことだったが、10巻どころか11巻でも終わらない予定らしい。
主人公の仁が作った木彫の神像から、本当に生まれた神様のナギ。最初は彼女のことがうっとおしかった仁も、ドタバタ生活を送るうちに、彼女に特別な感情がわいてきたことに気づいた。
ところが「穢れ」を多く取りこんだ彼女は祓われてしまい消滅。なんとか戻ってきたものの、仁の記憶を失っていた。
ここまでの「かんなぎ」は少々複雑だ。神様だと思われていたナギは、いわば神の端末のようなもので、いくつにも別かたれた神の人格のひとつだった。
そこから切り離され、ひとりの「ナギという少女」になったところから10巻は始まる。
神様から縁を切られたことで、ナギの力は弱まっていくばかり。さらに仁の告白により、彼女のなかに恋愛感情がわき起こる。それを我慢すれば、穢れがどんどん湧いてきてしまうようになった。
仁への想いを耐えて穢れをばらまくか。
仁を好きな少女を傷つけてでも、自分の恋を実らせるか。
最期まで神としての力を使い、消滅していくか。
決断が迫られる。
この作品は、どんなシリアスな展開でも、必ずユーモアをはさんでくる。
そもそもナギと、仁の幼なじみつぐみと、そして仁自身、全員が天然おばかさん。彼女たちの日常のゆるゆるな、当たり前の日々が魅力のマンガだった。
だからこそ、シリアスな展開になると深みがグッと増す。
ナギが決断するのは、今までの楽しかった日々への別れの覚悟だ。
とはいえ、10巻までの間に仁もナギも、数多くの頼れる仲間に出会っている。
ラストに向かっての大団円を期待したい。
……正直言うと、ずっと終わらないでほしいです!!
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」