『あかぼし俳句帖』第1巻
有間しのぶ(作) 奥山直(画) 小学館 ¥552+税
(2015年7月30日発売)
世界最短の定型詩と言われる俳句。
十七音の中に風景を切り取り、心情を鮮やかに浮かび上がらせるその世界に、ハマり始めたおやじがひとり――。
今や窓際、かつては(自称)広報部の猛者だった明星啓吾(あかぼし・けいご)。
あと5年で定年を控える彼は、何か趣味でもと思い本屋を物色、俳句の雑誌を見つける。
その雑誌に特集されていたのは、水村翠(みずむら・すい)という女流俳人だった。
ふとしたことから翠と縁ができた啓吾。
まずはその外見にひかれ、翠に近づきたい一心で俳句を始めるが――。
ひとことで言って、とにかくおもしろいマンガだ。
初心者かつ翠に対する下心見え見えの啓吾の駄句があるいっぽう、対照的に翠ほか真剣に俳句に取り組む人々の佳句を紹介して、いい俳句とは何か、俳句の魅力とは何か、非常にわかりやすく伝えてくれる。
しかもマンガと俳句は、意外なようで非常にマッチする組み合わせだ。
俳句表現が視覚的にぱあっと理解できることで、どんどんページが進む。
マンガは、俳句を説明するのにたけた方法なのかもしれないとも感じた。
やがて啓吾は、なぜ自分の句は五七五なのに俳句に思えないかという疑問を持ち始め、俳句の真髄へとどんどん迫っていくことになる。
後半、メキメキと伸びていく啓吾が小気味いいほどで“がんばれ、いいぞおやじ!”と応援したくなる。
続刊が楽しみな一冊だ。
それにしてもラスト1ページ前に啓吾が詠んだ句がすごくて、思わず涙してしまったことはナイショです(笑)。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」