『トコナツ』
月子 幻冬舎 ¥630+税
(2015年7月24日発売)
男子校に通う増田くんは至ってふつうの高校生。
なのに、同じクラスで仲よしの宮沢くんにときおり目を奪われて……!? いや、特別な感情を持ってるわけじゃない、すべては宮沢くんのキレイな女顔のせいなのだ!!
宮沢くんは体型もスラリときゃしゃで、うっかりすると女子と見間違えそうだが、中身はまっとうに男の子らしい男の子。
街を歩けばスカウトが寄ってくるほどのルックスなのに、まだまだ無邪気で“カノジョ欲しい願望”は薄い様子である。
本作は、そんな増田くんと宮沢くんを中心に、ひたすら男同士でワイワイする“夏の風景”を切り取った14話で構成されている。
プールの授業、肝だめし、バイト、海に夏祭り……。心浮き立つ夏ならではのお楽しみが続く毎日のなか、増田は宮沢のなにげない表情、一挙手一投足にドキッとときめいてしまう。
しかし、当の宮沢はまったく無防備かつ無自覚で、「俺で勃起してんじゃねーよ」などと危険な冗談を飛ばしてくる始末。
念のため言っておくけれど、本作はボーイズラブにあらず! しかし、男子校に通った人でこれに近い感情を抱いた経験のある人もいるのでは?
男子校でなくても、宮沢ほどの美少年ではなくても……「増田くんと宮沢くん」は全国各地津々浦々に存在するはずだ。
そして、それを遠巻きにながめるBL的アンテナを持った女子たちも。
「これはボーイズラブか否か」といった線引きは、結局のところマンガでもリアルでもあいまいなのではないだろうか。
そこの“あいまいなライン”にこそ多くの人が共感できるときめきがあるはずで……本作は、だからこそ男性にも読んでほしいのだ。
とはいえ、終盤の壁ドンには驚かされたなぁ。単巻で終了とはもったいない。ぜひとも続きを描いてほしい作品である!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」