『進撃の巨人』第17巻
諫山創 講談社 ¥429+税
(2015年8月7日発売)
実写映画が公開中、アニメ2期を来年に控えた『進撃の巨人』。
第17巻でひときわ目立つのは、新しい奇行種の巨人の登場シーンだ。
身体は超高熱。自重で立つことができない。だから顔と胴体を地面に擦りつけながら這い歩く。壁をつかんで立ち上がると、削れまくって内臓と脳みそが丸見え。
人を喰うのがこの作品の巨人の怖いところなので、口がごっそり削れている巨人はそこまで脅威ではない。
しかし実際にマンガにするとインパクト抜群。笑っちゃうくらい怖いので、ぜひ見開きで見ていただきたい。
新しい巨人との戦闘、巨人の謎解き、政治、リヴァイの過去、調査兵団の楽しいドタバタと、『進撃の巨人』のおいしいところ全部盛りの巻。
折り返し地点を過ぎて、佳境に入る前段階の趣だ。
特に、命を賭して皆を助けようとしたエレンに対して、「もうこれはダメだ終わりだ終わりだこのおばんげねぇ奴はしゃんとしないや……本当メソメソしてからこんハナ垂れが……と思いましたよ」と言っちゃう、サシャのボケっぷりには心底ほっとさせられる。
食事シーンでは、ヒッチの好意に気づかない鈍感なマルロに、アルミンらが総ツッコミ。
訓練兵時代のようなワイワイガヤガヤ感。ギャグパートもしっかり堪能できる。
表紙が示すように、この作品は「青春群像劇」だ。
多くの謎と熾烈な戦闘に目を引かれるものの、根底にあるのは若い少年少女の悩みや苦しみだ。
エレンとヒストリアの抱える問題は、国家レベルに大きい。特にヒストリアが貧困層を救うために着々と動く様子は、大人顔負け。
エレンは街の人たちの命を守るため、何度も巨人化して身体を酷使し続ける。ただただ頭がさがる奉仕的精神。
でも、感情が高ぶって判断が鈍ることもある。
エレンたちには、“サシャ弁”で言うところの「おばんげねぇ」部分は、まだまだある。
まだまだ彼らは若いんだ。世界のためだけじゃなく、彼らのための明るい未来があってもいいじゃないか。少なくともこの巻では、巨人の核心にせまる光が見えてきたのだから。
とりあえず本作おなじみ「嘘予告」を見たところ、この作品の行く末は絶対ブレない、と安心しました。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」