『NARUTO-ナルト- 外伝 ~七代目火影と緋色の花つ月~』
岸本斉史 集英社 ¥400+税
(2015年8月4日発売)
落ちこぼれ忍者・うずまきナルトの成長を軸に、奇想に満ちたファンタスティックな忍術バトルを描き続け、15年以上の長きにわたって「週刊少年ジャンプ」を支える太い柱のひとつであった大長編マンガ『NARUTO -ナルト-』。
この単行本に収録されているのは、その本編完結後に「ジャンプ」で短期集中連載された、成長したナルトと仲間たち、そして、彼らが育む次世代の幼き忍者たちの姿を描いた外伝だ。
ナルトの永遠のライバルであり、だれよりも互いを理解し合う関係である、うちはサスケ。
ナルトのかつての想い人であり、今でも大事な友人であるサクラ。そんな2人の娘のサラダが、本作の主人公だ。
サスケが重大な任務を帯びて家を空け続けているため、ものごころついたときから、一度もまともにサスケに会ったことがないサラダは、忍者として一人前と認められるアカデミー卒業試験を前に、同級生たちが親子の絆を確かめ合う姿を見て複雑な思いを募らせる。
そんなとき、ひょんなことから彼女は、自分の出生と、父の母への愛に疑惑の生じるような写真を見つけてしまう。いてもたってもいられなくなったサラダは、届けられた情報をもとに里の危機を察知したナルトがサスケと合流しようとするのをこれ幸いと、なかば強引に同行し、父を直接問いただそうとする。
しかし、無事に対面したサスケは、とっさに娘の顔がわからず(念のため書いておくと、わからなかった理由はちゃんとあります)、2人の感情はこじれてしまう。さらに、あらわれた強敵によって、事態は二転、三転とこじれ……。
「外伝」とはいうものの、ただのヌルいファンサービスに留まらず、「家族」「仲間」といった本編の重要なテーマがぎゅぎゅっと詰めこまれた、『NARUTO』らしい濃密なストーリー展開が楽しめる。
バトルも小規模ながら、キャラクターごとの特殊な戦い方がしっかりと堪能でき、充実の内容だ。
本編のファンは当然マストバイだが(って、いうまでもないか)、未読の人が本書から手を出して、さかのぼって本編を読んでみるのも、アリではないか。
なお、絶賛劇場公開中の映画『BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE- 』は、時系列的には本作の後にあたるエピソード。
本書の内容と直接の関係はないが、読んでから足を運ぶとより楽しめるので、オススメだ。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei