365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
さて、9月25日は浅田真央(フィギュアスケート選手)の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『集英社文庫 愛のアランフェス』第1巻
槇村さとる 集英社 ¥543+税
1990(平成2)年9月25日、愛知県に誕生したフィギュアスケート選手といえば……? 正解は、浅田真央!
幼い頃から天才少女の名をほしいままにし、中学生にして女子ジュニア史上初の3回転アクセルに成功。実力に加え、素直で愛らしい人柄も魅力的、だれもが応援せずにいられない。
同い年のライバル・金妍兒(キム・ヨナ)としのぎを削りあうさまはまるでマンガのヒロインだった。
2014年の世界選手権で優勝を飾ったのち、1年間の競技生活休止を発表していたが、2015年5月に現役続行を表明! 今年25歳を迎える真央ちゃんの姿がまたリンクで見られるのはうれしいかぎりだ。
そこで紹介するのは、大のフィギュアスケートファンを公言する作家の作品だ。現在も「Cocohana」誌上で、フィギュアの天才少女を描く『モーメント 永遠の一瞬』を連載中の槇村さとる、70年代の名作である。 フィギュアスケートの大会に、いきなり飛び入りした高校生の森山亜希実。当時の女子選手では珍しかった3回転ジャンプを連発し、観客席は拍手喝采の嵐。当初は激怒した関係者たちも絶句……翌日から、謎の少女探しに大わらわとなるのだった。
また、このときの亜希実のスケーティングは、わけあって表舞台から姿を消していたスケーター・黒川貢の心を大きく動かしていた。
お互いの滑りにひかれあう亜希実と黒川は、シングル選手として期待されつつもペアを組むことに。
とはいえ、すぐれた技量を持つ選手がそろってもうまくいくとはかぎらないのがペアのおもしろさだ。本作は随所で、アスリートの精神面の重要さを描いている。
母の死、ライバルの存在やプレッシャーの壁、コーチから突きつけられる新たな課題……ヒロインが壁を一つひとつ乗り越えていく道程はなまやさしいものではない。
伝説のスケーターといわれる亜希実の父、亜希実と黒川の良き助言者となる先輩スケーターの筒美一と貝谷真紀子など、脇をかためるキャラクターたちの存在感も大きく、スポ根というより読ませる人間ドラマである。
フィギュアスケートが好きな人なら一度は聞いたことがあるだろう定番曲「アランフェス協奏曲」(トリノオリンピック金メダリスト・荒川静香さんも使用したことがある)の哀切と情熱の漂う調べに乗せて、亜希実と黒川、2つの魂が交錯する、掛け値なしの名作だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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