『集英社文庫 BELIEVE』第1巻
槇村さとる 集英社 ¥600+税
1804年の今日9月1日、ドイツの天文学者カール・ハーディングが太陽系の小惑星ジュノーを発見。
ケレス(セレス)、パラス、ベスタと並んで四大小惑星と呼ばれるジュノー。
名前の由来はローマ神話の女神ユーノー、ギリシア神話ではゼウスの妻ヘラにあたる。
さて四大小惑星は、占星術でも用いられる天体として知られている。
普通は太陽や月、金星、火星などの10天体がメインだが、サブで用いられる四大小惑星が、メインに勝るとも劣らぬ働きをする場合もある。
占星術におけるジュノーは、「権利」や「主張」を意味する。
それは名前のもとになったユーノーやヘラが、結婚を司る女神であることとも大きな関係がある。
たとえば、妻であるという権利。それを主張し振りかざせば、嫉妬や干渉という形で表に出てしまい、トラブルのもとにもなるだろう。
しかし本来のジュノーは、諍いをもたらすだけではない。
正しいパートナーシップを計るという、重要なポイントなのだ。
今日ご紹介したいマンガ『BELIEVE(ビリーヴ)』は、ジュノーが傷ついた女性2人を中心に展開していく物語だ。
主役である37歳独身、敏腕マネージャーの山口依子と、彼女が見出したヒロイン・ルカがそうである。
ホロスコープのなかでジュノーが強く働くと、ついついよけいなところまで口出しすることになる。
自分が仕切ればうまくいくと思いこんでしまう、それがジュノーの性質だ。
マネージャーたる依子は、その仕事柄からもそういう態度に出てしまいがち。
また彼女が見出したルカは家庭事情が複雑で、自分の望むパートナーシップがどういう形なのか、自分でもわかっていないきらいがある。
こちらは、依子とは逆に、ジュノーが引っこんでしまっていると考えるとよいかもしれない。
いずれのジュノーも、けっして健やかではない。
ホロスコープで傷ついたポイントがある時、それに対処するにはどうすればいいか。
それは何よりも、その傷がどういうものかを知ることだ。
依子もルカも、数々の事件を経験して、自分の傷を知っていく。
ルカがめきめきと芸能界で頭角を現すからこそ、ルカ自身も、またそのマネージメントをする依子も、いろいろなことにぶつかって、最後はもっとも根本的な問題に立ち返る。
そして一番痛い場所、その闇を見つめ終えた時に、人は大きく成長できるのだ。
コミックスでは全7巻、文庫版では全5巻。
すべてを読み終えた時に彼らがたどり着く場所はどこか、傷は癒えたのか、そのパートナーシップはどのような形になっているか――。
そのあたりを楽しみに、読み進んでいただければと思う。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」