日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『お父さん、チビがいなくなりました』
『お父さん、チビがいなくなりました』
西炯子 小学館 ¥429+税
(2015年9月10日発売)
『娚の一生』、『姉の結婚』でアラサー~アラフォー女子の支持をえ、最新連載『カツカレーの日』も好評の西炯子の最新単行本。
3人の子どもが巣立ち、人生の晩年を夫婦2人で過ごす、菜穂子(37歳)の両親。平穏な暮らしを送っているかと思いきや、突然、母が離婚を考えていると言い出した。
そんなとき、飼い猫のチビが姿を消して……。
無口で不器用な「父」とおっとりと明るい母。これぞ日本の(てか昭和の)夫婦像!といった老夫婦のなにげない日常描写が、なんともリアルで楽しい。
そんな2人のまさかのすれ違いと波乱……てのも、いまやホームドラマの定番となりつつあるが、だからこその共感ポイント満載。
ザ・西炯子ワールドな菜穂子と年下の同僚男性(クールで強引!)とのエピソードもしっかり描かれていて、従来のファンもそうでない人も満足できる懐の広さが魅力だ。
いなくなって初めて気づく、すぐそばにいる人の大切さ。
といえば、陳腐ではあるが、夫婦も親子もしょせんは他人。だからこそ、家族という関係に甘えず、大切なことは言葉でちゃんと伝えて、大切にしなければいけないんだな~、と。
仲よし老夫婦に憧れる人はもちろん、『ゴーンガール』のような映画にグッときてしまうような輩も、思わずハッとさせられる気づきが満載。
単なるホッコリでは終わらない一冊だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69