『恋と軍艦』第7巻
西炯子 講談社 \429+税
(2015年3月13日発売)
中学1年生で「カテイガフクザツ」なため祖母に預けられている主人公の遠藤香菜は、ひょんなきっかけから41歳の町長に恋をした……。
かつて軍需産業で軍艦の部品を作って栄えた港町を舞台に、大人の世界に近づきつつある少女の物語が綴られる。
いま「大人の世界」と書いたが、その内容がどんなものなのか、本作を読まずに正確に想像できる人はいないだろう。
主人公は中学生だが、物語を動かしているのは主人公たちが想いを寄せる、町長をはじめとした大人たちである。
町に活気を取り戻すため、町長は町民の一部と対立しながら様々な施策を打とうとする。
そこだけ切り取ればまるで社会派の作品になるのだが、本作はあくまで少女を中心にしたラブコメとして成立しているのがおもしろい。
最新巻となる第7巻では、主人公の親たちや町長ら「大人の世界」に属する人々の状況が大きく変化を見せはじめる。これまでは、その変化に至るまでの経緯が少女たちの視座から描かれてきた。
それぞれの仕事によって分断されている「大人の世界」が、背伸びしながら覗き見ている少女たちの「幼さ」「青臭さ」によっていわば底が通じていく。
「少女たちの世界」と「大人の世界」という、それぞれの時間や立場があまり変動しない世界に対して、ふたつの世界のあいだを視点が往還することは、そこで成長している人々が「生きている」という感覚を読者に与えるだろう。
要するに、良作である。
これを「なかよし」で読めるリアルな少女たちは幸せだと思う。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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