365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月17日は岸田森(俳優)の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『怪奇大作戦【桑田次郎版】+学園名主』
桑田次郎(著) 円谷プロ(監)マンガショップ ¥1,800+税
きょう10月17日は、個性派俳優として知られる岸田森の誕生日。
享年43歳という若さで亡くなり、すでに没後30年を越えるのだが、印象的な演技や忘れえぬキャラクターはいまだ色あせることなく、多くの人々に愛され続けている。
岸田森が演じたのは、どちらかといえば主役よりもサブキャラクターや敵役が多かったのだが、どんな役柄であっても強い印象を与えるように心がけていたという。
たとえば『帰ってきたウルトラマン』では、主人公である郷秀樹の兄代わりとなり、ときには厳しく叱責することもあった坂田健を好演。
坂田さんのセリフは、岸田森の独特の間や憂いを含んだ演技によって、より含蓄のあるものとして心に響くものとなったと言えるだろう。
そのいっぽうで、当たり役となった『呪いの館 血を吸う眼』などで演じた和製ドラキュラをはじめ、『蘇る金狼』での盲人の殺し屋(表向きは興信所の所長ではあるが)や、『ダイナマイトどんどん』で演じたピンク色のスーツに身を包んだヤクザの幹部といった、数々の“怪演”でも知られており、たしかに大きな役から一瞬しか出番がない役まで、インパクトを残すという点では一貫しているのは間違いない。
そんな岸田森が生前に残しているコメントに、「心のなかでは僕は円谷育ち」というのがある。
見るものを刺激するような演技への感性は、本人曰く円谷プロの特撮作品に出演することによって培われたところは大きいのだと言う。
そして、その円谷プロとの最初の関わりとなったのが、SFサスペンスドラマ『怪奇大作戦』。
岸田森が演じたなかでも屈指の人気を誇る、牧史郎役である。奇怪な事件に科学捜査のメスを入れる立場でありながら、ときには犯罪者の心の闇にシンクロしてしまうこともあるというセンシティブなキャラクターは、まさに岸田森のハマリ役のひとつであろう。
……とまぁ、『怪奇大作戦』の魅力をここで語り尽くすにはとてもスペースが足りないのだが、桑田次郎によるコミカライズ版の『怪奇大作戦』も、ドラマ版とはまたひと味違った魅力に満ちた一品。
というのも、単行本に収録されている「蛾」「死を呼ぶ絵」「ふたつの顔の少女」の3作品は、それぞれドラマ版の「人喰い蛾」「殺人回路」「吸血地獄」にあたる作品なのだが、映像化に先がけ、脚本をベースに描かれているため、作品によっては諸事情によって設定や人物配置が変更される前のストーリーとなっているのだ。
そのため、脚本家が本来伝えたかったのはこちらのほうが近いのかな? と思えるものもあったりするのである。
なお、牧史郎に関しては、このマンガのほうでは、いわゆる「理知的な捜査官」としてストレートに描かれている。
これはこれでカッコいいのだけれど、やっぱり少し屈折した魅力は岸田森の演技によるところが大きいのだろうなぁ……と、あらためて実感。
そんな比較も含めて、ぜひコミカライズ版もご一読いただきたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。