365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月18日はフラフープの日。本日読むべきマンガは……。
『初恋モンスター』第2巻
日吉丸晃 講談社 ¥581+税
フラフープ。
小学生時代の思い出として懐かしい方も多いだろう。
定義次第では古代のエジプトやギリシャまで起源をさかのぼるが、直接には1957年、米国の玩具会社が既存の輪っか遊具を腰で回して遊ぶコンセプトとともに売りだしたのが火つけ役である。
「フラフープ」は商標で、フラダンスの「フラ」と輪っか遊具の一般名詞「フープ」をあわせた造語。これが世界で売り上げ1億本越えを果たす大ヒットになった。
ブームは日本におよび、1958(昭和33)年10月18日に国内販売がスタート。
つまり本日はフラフープ記念日なのだ。
なお、発売後すぐ「フラフープをやりすぎると腸捻転になる」という噂が世間をかけめぐり、日本でのブームは2、3カ月で終息した。
腸捻転うんぬんは都市伝説だという指摘が一般的だが、いちおう負傷例も実際に報道されている。遊戯人口が多かったぶん、発生率が1パーセント以下でも世間では頻発したという印象があることから、「事実無根ではないが針小棒大に伝えられて、炎上した」というくらいだろう。
今回は、そのフラフープが原因で、身体ではなく人間関係が壊れる展開がある『初恋モンスター』を紹介したい。
本作は、女子高生・二階堂夏歩(にかいどう・かほ)と、小学生男子・高橋奏(たかはし・かなで)の年の差カップルが見舞われる波乱を描いたラブコメだ。
見どころは奏くんの外見。小学5年生でありながら、まるで成人男性としか思えない、八頭身ボディーの美形男児なのである。
それでいて中身は年相応。登校しては同級生に「おはヨーグルト」とダジャレの挨拶をかましたり、うんこネタに興味なんかないねというポーズをとりつつ反応するなど、言うことなすことお子さまそのものだ。
身体は大人、頭脳は子ども。名探偵にはなれない。
この少年が、トラックにひかれそうな夏歩を助けて一目惚れされることから物語は転がりだす。
奏と夏歩はひとまず恋人になるが、2人の関係には最初からひずみがある。
夏歩は恋愛感情をがっつり燃やしているのに、奏はまだ恋人のつきあいがどんなものかピンとこないのだ。
ある時、奏は仲がいい小学6年生の兄貴分(やっぱり八頭身イケメン)が夏歩に好感を抱いたと知り、じゃあ3人でつきあうことを提案。
恋人の「ただひとり」の特別になりたい気持ちが強い夏歩は、自分と奏のズレに傷ついてしまう。
彼女のあまりの落ちこみように、自分がひどいことをしたと悟った奏。彼がとった謝罪の方法は……
「今からこのフラフープを200回まわす」
「自己最高記録は175回… これをやり遂げたら俺を許してほしい」
なぜそこでフラフープ!?
と、夏歩と読者のツッコミをよそに、奏はキリッとクールな超シリアス顔で腰をぶおんぶおんくねらせフラフープを回しだす。
自己ベストを越えて180回、190回……と目標達成の寸前、フラフープが地面に落ちる無慈悲な音が響き、
「俺たち 別れよう……」
フラフープに失敗して破局するカップル! なんだそれ!
ちなみにこれを受けて「四捨五入すれば200回だよ!」とフォローしようとする夏歩もたいがいいい味を出している。
この、第2巻から第3巻にかけての展開は、シリアスにボケる本作の持ち味がわかりやすい。
ここを受け止めきれればやみつきになることうけあいだ。
アニメ化も決定しており、このフラフープ編が声と動きつきで見られると思うと……今のうちに腹筋を鍛えておかなくては……。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7