日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『菜々子さん的な日常REVIVAL』
『菜々子さん的な日常REVIVAL』第1巻
瓦敬助 小学館 ¥630+税
(2015年10月9日発売)
2016年にTVアニメ、そして実写映画の公開も決定した『僕だけがいない街』。
その著者である三部けいが、「瓦敬助」の別名義で約20年に渡って描きつづけてきたのが『菜々子さん的な日常』シリーズである。
天真爛漫で、やたら無防備(ここ重要!)な菜々子さんと、彼女の巻きおこす「ラッキースケベ」をやたら目撃してしまう瓦くんが織りなす、ちょっと刺激的な「日常」を描く本作。
いわゆる「ほのぼのお色気コメディ」といった内容だが、菜々子さんの肉感的なボディはあまりにも魅力的すぎであります!
そして、「瓦くん」の名前からもわかるとおり、舞台となる北海道の学校や、数々のうらやましすぎるラッキースケベは、著者自身の実体験がベースになっていることが過去の刊行物で明かされている。
まったくジャンルが違う作品とはいえ、私的な体験が多分に反映されているところは『僕だけがいない街』とも共通していたりもするワケで、まさに著者の原点ここにありと言えるかもしれない。
なお、タイトルに「REVIVAL」とある通り、この単行本は、基本的には過去作品からの傑作選である。
ただ、もともとはコアマガジン系列の成人向けコミック誌などに掲載されていた都合で、初期作品は手に取ったことがない読者も多いであろうことを考えると、たいへんありがたい一冊。
ちなみに、「成年コミック」になっていた時代から、いわゆる「修正」の必要はないマイルドな作品だったので、一般向けの扱いになったせいで改変されたりはしておりませんのでご安心を。
『僕だけがいない街』のほうでも「再上映(リバイバル)」が超重要キーワードではありますが、こっちのリバイバルもお楽しみいただきたく思います。
著者の新規のファンには「こんな作品を描いていたのか!」とおそらく新鮮な驚きが、そして長らくファンだった人にも感慨深いものがある一冊として……。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。