365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月21日はフライドチキンの日。本日読むべきマンガは……。
『UMEZZ PERFECTION! 14歳』第1巻
楳図かずお 小学館 ¥2,286+税
フライドチキン。
鶏肉を揚げるスコットランド風の食べ方が移民経由でアメリカに伝わり、南部のアフリカ系労働者たちの手を経て現在ある形に定着した大衆食である。
経緯が経緯だけにアフリカ系アメリカ人に対する差別的なステレオタイプのシンボルだった料理なのだが、現在ではアメリカ自体を代表する食べ物として世界中でおなじみになっている。
これはやはりケンタッキーフライドチキンをはじめとするファストフード店の海外展開によるところが大きいだろう。
そして今から45年前、1970年。
ケンタッキーフライドチキンが大阪万国における出展のあと、名古屋の郊外で日本第1号店をオープンした。
その日付が11月21日ということで、本日がわが国における「フライドチキンの日」になるわけだ。
さて、マンガの世界でチキンの名をもつキャラクターの超大御所といえば?
そう、楳図かずお『14歳』のチキン・ジョージですね。
舞台は、クローン技術が発達した未来社会。
精肉工場で培養されていた鳥のササミにぎょろりと目玉が生じ、やがてニワトリの頭部と人間的な四肢からなるクリーチャーが誕生する。
ひとの言葉を理解し、コンピュータを使って科学知識を吸収、やがて自分は人類にいいようにされてきた動物たちの代表であると自覚した天才トリ人間、それがチキン・ジョージだ。
地球の環境問題を皮切りに、遺伝子レベルのミクロから宇宙の崩壊というマクロ、さらにはそれらすべてをつつみこむ時空の壁をも突きぬけたSF終末神話の底を支える重要人物である(鳥だけど)。
人類を呪い、地球の行く末を憂い、けれども人間の女性を愛して泣く泣く己の節を曲げ、死して怨念となり人類最後の子どもたちにへばりついて宇宙まで飛び出し、最後の最後で美しい光景のなかに昇華されたチキン・ジョージ。
『14歳』は人間、宇宙人、ゴキブリ進化種まで数多くのキャラクターや勢力が交錯する入り組んだ群像劇だが、同時に、ただひとつの魂のさまよいを描いたシンプルな旅路でもある。
人種差別の歴史にもつながりのあるフライドチキンにゆかりあるこんにち、あえて虐げられた動物の代弁者がニワトリの形をとって現れる本作を読んでみるというのも、心にしみるものがあってよいかもしれない。
なお、『14歳』は2012年に完全版(全4巻)が刊行されており、巻末に新規描きおろしのエピローグと著者・楳図かずおのインタビューが追加されている。
初出の単行本や文庫版をお持ちのかたでも、少なくとも完全版の最終巻は一読して損はないだろう。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7