日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ロボッとうさん』
『ロボッとうさん』第1巻
有永イネ 小学館 ¥552+税
(2015年11月12日発売)
第2の家電として家庭用アンドロイドが導入され、日常生活のあらゆる面にロボットが溶けこんだ近未来。
ロボット基本法案によって、過度に感情を表す機能をつけてはならないと決められているが、それでもバグは存在する。
おバカで父親想いのヤンキー・蓮助の父は、介助アンドロイドプロトタイプ、つまりロボット。
蓮助が16歳になった誕生日に父がロボットであることを明かされるが、全長36.25センチであることも、首がポコッと外れることも、食事はコードをつないでコンセントからであることも……明らかにロボットだろ! とだれもがツッコむところだが、蓮助はほかの家庭の父(人間)も同じだと考えている。完全にアホの子なのだ。
もしもロボットの父にバグ(感情)があるとわかってしまうと、回収されてしまう。バグロボットだと他人に見つからないようにロボットらしく、一方で蓮助に対しては父としてふるまわなければならない。
父(ロボット)、蓮助、2人をクールに見守る幼なじみのめぐむが、この矛盾を抱えた日常をどう乗り切っていくかのドタバタコメディだ。
加えて、この物語をさらに盛りあげてくれるのが、第4話から登場する姫子だ。
蓮助のクラスメイトであり委員長、生まじめな性格のおさげメガネっ娘。そして、熱烈なロボットオタクなのだ。
ロボット父さんが笑顔でいる場面に遭遇してしまった彼女は生まじめな雰囲気から豹変、「ゴッド級のかわいさ」と叫び、「あ――ダメだな――かわいすぎて自分のお墓掘っちゃうよ~~」と地面を殴りつける。
ハイテンションで、神を崇めるような愛し方は、Twitterで目にするおそ松好きや『刀剣乱舞』ファンと似たものを感じて、その愛し方を見ているだけで思わずニヤけてしまう。
同作は基本的にコメディ路線だが、ロボットの終末や親子愛などヒューマンドラマとしてもすばらしいマンガだ。
著者の有永イネは『さらば、やさしいゆうづる』、『かみのすまうところ。』でも成長や生き様を描いてきたが、今回もそれが存分に表現されている。
同作と同時発売された『鬼さん、どちら』は『ロボッとうさん』とはちがった重いトーンだが、笑えて泣けて、最後にはしっとりと楽しい気持ちになれるのは共通項だ。過去作品ともあわせて、ぜひ“作家買い”をしてほしい。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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