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『雪ノ女』 相澤亮 【日刊マンガガイド】

2015/12/11


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『雪ノ女』


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『このマンガがすごい! comics 雪ノ女』
相澤亮 宝島社 ¥800+税
(2015年12月10日発売)


2015年で第6回目を迎えた新人マンガ賞『このマンガがすごい!』大賞で最優秀賞を受賞したのが『雪ノ女』(相澤亮)である。

本作は小泉八雲の怪談小説『雪女』をモチーフにした作品だ。
作品世界を現代に移し、さらにその後日談的なエピソードを追加し、父娘二代にわたるストーリーとして大きくアレンジを施している。異類婚姻譚の説話であった『雪女』が、きわめて情緒的な悲恋と贖罪の物語へと味つけされたところが興味深い。

何よりも特筆に値するのは、薄墨で彩色した独特な絵柄だ。全編を墨の濃淡で描ききり、その淡くてはかなげな印象が作品テーマともマッチしている。
墨で彩色していない部分がまるで浮き上がってくるようでもあり、積雪の厚み、怯えた表情、雪女の肌のきめ細かさ……、そういった「白」が際立っており、そこに「(物語を)読む楽しみ」以外に「(絵を)見る楽しみ」を感じるだろう。

また、擬音(描き文字のオノマトペ)の少なさも特徴的だ。
それが絵のタッチと相まって、前半部分は雪山の静謐さを、そして後半部分では聴覚障がいを持つ少女の静かな世界が表現されている。
そしてページの左右幅をいっぱいに使った横長のコマで動きを見せていく連続シーンは、映画的であり、シネラマのような臨場感がある。

技術とテーマが適合した場合、われわれはそこに作家性を見出す。
これが著者にとって初の単行本、新進の作家性の萌芽を見守ってほしい。

『雪ノ女』の試し読みページはコチラから!



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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