365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月27日は、テリー伊藤の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『極厚 蒼天航路』第1巻
王欣太(著) 李學仁(案) 講談社 ¥1,143+税
本日12月27日は、芸能人・テリー伊藤の誕生日だ。
東京築地の市場にある玉子焼き店「丸武」を実家に持つテリー伊藤は、1973年にテレビ業界へと入り、アシスタントディレクターとしてそのキャリアを開始した。
テレビマンとして、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の総合演出などで活躍したあとは、コメンテーターとしての活動も開始。
現在ではお茶の間で親しまれるタレントとしても、制作会社の社長を務めるテレビマンとしても大御所的な存在となっている。
今回は、そんなテリー伊藤に外見が激似と言われるマンガキャラ、『蒼天航路』の陳宮を紹介したい。
魏国の主・曹操の覇道を突き進む人生を中心に三国志の物語が紡がれていく本作では、軍師のひとりである陳宮と、戦士・呂布の関係性が見どころのひとつになっている。
当初は曹操配下の者として活動していた陳宮だが、苛烈な曹操の覇道に反目し、新たなる主君として闘神のごとき力を持つ呂布に仕えることとなる。
当初は、猪突猛進すぎる呂布のふるまいに戸惑ったり、その怪力で身体をボール状にされてしまったりと、心身ともに振りまわされまくる陳宮。
だが、その献身もあって、呂布は孤高の戦士から王者として目覚めていく。
その2人の関係性が輝くのが、呂布と陳宮にとって最期の戦いとなる下ヒ城での決戦だ。
曹操軍の水攻めによって、絶体絶命の状況下に陥る呂布軍。呂布に反旗を翻そうとする者もいるなかで、陳宮は己の主君に最後まで付き従おうとするが、捕らえられてしまう。
そのとき、呂布が、初めて臣下の危機に動揺し、感情をむき出しにして陳宮の名を叫ぶのだ。その前のシーンで陳宮が涙ながらに言う「呂布殿は、天下無敵でござる!」と合わせて、呂布&陳宮コンビの散り様は『蒼天航路』序盤のクライマックスといえるだろう。
そんな陳宮だが、じつは単行本第32巻の巻末コメントにて、モデルはテリー伊藤ではなく、著者の王欣太が『蒼天航路』以前に執筆した『Heaven』から流用したデザインであり、そのモデルはチャップリンとジャック・ニコルソンと指摘されている。
実際のところ、『蒼天航路』で実在の人物がモデルとされているキャラクターは、董卓=マーロン・ブランド、荀攸=佐久間象山、何晏=浅野忠信の3人だ。これらは陳宮と違って意図して似せられているため、その立ちふるまいもどことなくモデルを連想させるものとなっている。
このように、歴史上の人物にモデルを設定してキャラを描くのは、近年では「ヤングマガジン」にて連載中の戦国時代を舞台としたマンガ『センゴク』シリーズなどでも印象的に行われている。
たとえば武田信玄がマーロン・ブランドで、息子である武田勝頼はロバート・デ・ニーロ+アル・パチーノという、映画『ゴッドファーザー』そのまんまな配置で、映画を知る人には信玄の人間的なデカさ、息子である勝頼の才と苦悩が一発で理解できるようになっているのだ。
このように、実在の人物とモデルとなったキャラクターの関連性に想像を膨らませて楽しめるのも、歴史を題材としたマンガならではの魅力といえるだろう。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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