日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『WHITE NOTE PAD』
『WHITE NOTE PAD』第1巻
ヤマシタトモコ 祥伝社 ¥680+税
(2015年12月4日発売)
「男女入れ替わりもの」といえば、思春期男女のちょっとエッチなドキドキ胸キュンもの……と思いきや、こちらで入れ替わるのは、なんと女子高生と中年おじさん!
ある日突然、体と人格が入れ替わってしまった女子高生の小田薪葉菜(おだまき・はな)(17)と自動車工の木根正吾(きね・しょうご)(38)。
2人が1年後に偶然再会した時、木根の方は人生経験を武器に葉菜の容姿を磨き、読者モデルとして勝ち組の日々を謳歌していたが、葉菜の方はパニックのまま記憶喪失扱いされ、木根の武器であったはずの専門技術もないため失業し、清掃業のバイトをしながら孤独に暮らしていた……。
そんな「格差入れ替わり」な設定がうまい! けど、コワすぎ!
「なんでおまえのほうがうまくいってるんだ」と憤る葉菜に「あんたの人生がカラッポだったからじゃないの」と追い打ちをかける木根。
だが、葉菜の肉体をうまく利用したはずの木根も、結局は見た目だけの「カラッポな人生」を送っているわけで。
対して、木根の紹介で雑誌編集部の雑用バイトとなった葉菜は、おじさんと笑われながらも持ち前の素直さで必死に変わろうとし、みんなに愛されるようになる……。
これまでにも「性」や「心と体の不一致」に翻弄される女性心理を鋭く描いてきたヤマシタトモコだが、他人の体をした「わたし」と、わたしの体をした「他人」、どっちが本当の「わたし」? と読者自身に揺さぶりをかけてくる展開は、さすが。
「男女入れ替わり」を「わたし」という自己存在を根底から揺るがすような、異色の「男女入れ替わりもの」としては、押見修造『ぼくは麻理のなか』に通じるものもあり。まだ先が読めないながらも注目度大な作品だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69