日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『よい子のための尾玉なみえ童話集1 人魚姫』
『よい子のための尾玉なみえ童話集1 人魚姫』
尾玉なみえ 講談社 ¥660+税
(2015年12月9日発売)
アンデルセンの『人魚姫』を鬼才・尾玉なみえが独自解釈でコミカライズ。
人間の世界を見に行った人魚のアルカ(16歳)は、溺れていたところを助けたイケメン・亮くんにひと目ぼれ。
オスを惑わす“でらビッチボイス”と引きかえに足を手に入れ、いざ人間界へ……と、ここまではおおむね原作と同じ。
しかし、亮くんと同じ高校に編入したアルカは、彼がかなりピントのズレた底辺男子であると知るのだった!
「週刊少年ジャンプ」「ビジネスジャンプ」時代は再三連載打ち切りの憂き目にあうも、多くの読者に語られ続けた印象に残る作家。
ちなみに当時の作品『純情パイン』、『少年エスパーねじめ』、『アイドル地獄変』、などはいずれも復刊されている。もっとも『マコちゃんのリップクリーム』全11巻を完結させた時点で、「打ち切り女王」の名はすでに過去のものといえるのだが。
キャラクターの表情、セリフまわし、設定にしてもオーソドックスなマンガ文法をハズれたちょっとした違和感があり、ひとコマごとにムズムズ……じわじわ来る笑いが持ち味だ。
ところで本作、グッとくる結末が用意されているのは意外だった。
もちろん原作とはすでに大きく離れているが……尾玉流「人魚姫」として物語をきっちり収束させている。
現在、「月刊少年シリウス」連載中の童話シリーズ第2弾『雪の女王』も要チェック!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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