日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『妖怪の飼育員さん』
『妖怪の飼育員さん』第1巻
藤栄道彦 新潮社 ¥560+税
(2015年12月9日発売)
社会人1年生の鳥月日和(とりつき・ひより)の勤務先は「妖怪園」。
妖怪園とは大きな都市にひとつはあるごくありふれたもので、新人飼育員である鳥月は怪医師の陸奥吾郎の指導を受けながら妖怪の世話をする。
それをとおして人と妖怪を描く“展示系”妖怪マンガが『妖怪の飼育員さん』だ。
これまでにも人間と妖怪を描いたマンガはたくさんあれど、この設定はとても新鮮。
数多くの妖怪を登場させるにうってつけの舞台に「そうきたか!」とうなってしまった。
動物園ならぬ妖怪園では、すねこすり、さとり、河童などが暮らしており、妖怪園側は彼らが過ごしやすい環境を提供する。雪女や烏天狗など人間またはそれ以上の知能をもつ妖怪には年契約で園で生活してもらっている。
現代人と妖怪は共存しており、妖怪たちの生活と現代人、この対比によって人間を浮かびあがらせていく。
食べることとお酒と花札を愛するお人好しの鬼。相撲が大好きな河童たちは相撲の勝負に一喜一憂し、人間に怖がってもらえない小豆あらいは存在意義に悩み新境地を開拓しようと試みる。
妖怪たちは、ときには悩んだりしながらも、生きたいように生きている。
己の生態に見あった生活、つまり「妖怪らしい生活」。
これって人間でいう「人間らしい生活」ってやつなのでは。
妖怪園の妖怪たちのほうが楽しく暮らしている気がして、今日このごろの自分の生活ははたして人間らしいのか振りかえってしまう。
同時に「人間らしいってどんなものだろう?」とも考えてしまうのだ。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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