日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『しまなみ誰そ彼』
『しまなみ誰そ彼』第1巻
鎌谷悠希 小学館 ¥630+税
(2015年12月11日発売)
どんな親しい友人にも打ちあけられない秘密がばれてしまったら!?
高校生の要介(かなめ・たすく)の“それ”は、同性が好きということだ。
スマホの履歴からホモ動画を観ていたことがクラスメイトに知られてしまい、ごまかそうとするも動揺は隠しきれず、少年の表情に絶望が走る。
一気に引きこまれる、ドキッとさせる導入だ。
高校生の社会は狭い。翌日からの学校生活がどんなことになるか思いつめ、介は自殺を図ろうとする。
しかし、そんな彼の前に謎めいた女性が現れて……。
「誰かさん」と呼ばれる彼女にいざなわれ、介が足を踏みいれたのは死にたい人が集まってくるという 「談話室」。
ひとり心に秘めていた悩みを初めて口に出し、レズビアンのカップルと知りあい……介が立ちむかわなければならない課題はたくさんあるが、とりあえず学校以外の居場所ができた――!
舞台は尾道。「誰かさん」がオーナーの談話室は、全国的に話題となっている「尾道空き家再生プロジェクト」により手にいれたという設定。
セクシャル・マイノリティという大きなテーマに加え、地元の人々が集まるコミュニティのありようを描く作品としても要注目だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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