日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『含羞(はぢらひ) 我が友 中原中也』
『含羞(はぢらひ) 我が友 中原中也』第1巻
曽根富美子 復刊ドットコム ¥1,500+税
(2015年12月16日発売)
『新装版 親なるもの 断崖』が『このマンガがすごい!2016』オンナ編第9位にランクインした曽根富美子の名作がまたまた復刊!
89年より連載された本作は、文芸評論家であり作家でもある小林秀雄と、早熟の天才詩人・中原中也の物語である。
中原中也の作品はだれでも一度は教科書で目にしたことがあるだろう。その作品、あの黒い帽子をかぶった肖像写真から思い浮かぶ人物像は……透明感あふれる少年のような人? 内気な文学少年?
2人の出会いは、中也18歳、秀雄23歳のころ。
大正14年に山口から上京してきた中也は、東京帝国大学フランス文学科在学中の秀雄を訪ねてくる。子どものような外見とは裏腹にめちゃくちゃ弁が立ち、年上の秀雄にもずけずけとした口をきく。
医者の家に生まれた中也は、幼い頃から神童と呼ばれ将来を期待されるも、詩に耽溺。親のエリート意識への反抗心もあいまって、芸術の道を選ぶ。
年上の女性・やす子と同棲し、昼間から酒を飲み、文学仲間にややこしい議論をふっかける。
やっかい者扱いされる中也だが、秀雄は彼のエキセントリックな激情の奥にほの見える無垢な魂に、いいようもなくひかれていくのだった。
2人の天才の内面に肉迫した青春譚。
同好の士として、またかけがえのない友として……2人の歩みがどのように描かれていくのか、次巻が楽しみである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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