日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『マッドマックス 怒りのデス・ロード COMICS & INSPIRED ARTISTS』
『マッドマックス 怒りのデス・ロード COMICS & INSPIRED ARTISTS』
ジョージ・ミラー(作) マーク・セクストン/レアンドロ・フェルナンデスほか(画)
ニコ・ラソウリスほか(脚) 柳下毅一郎(訳)
誠文堂新光社 ¥3,000+税
(2015年12月10日発売)
日本では2015年6月に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、オーストラリアの巨匠ジョージ・ミラーが描く圧倒的かつ倒錯的な世紀末描写が話題を呼んだ『マッドマックス』シリーズ27年ぶりの最新作。
その黙示録的世界観を5編のマンガと、のべ65人のコミック・アーティストによって紙面にたたきつけたフルカラーアートブックが本書だ。
マンガは、映画の主要キャラクターがいかにしておのれの人生を選択したかを描く“前日譚”になっている。
「Nux & Immortan Joe」では、シタデル砦の独裁者にして武装戦闘集団「ウォー・ボーイズ」の首魁・イモータン・ジョーが、英雄的存在から残虐な暴君へ変貌していく様子と、ウォー・ボーイズの一員・ニュークスの少年時代を描く。
「Furiosa」は、その狂信的カリスマをもって5人の女性を“子を宿すための妻”として幽閉していたイモータン・ジョーに反抗して、彼女たちを解放しようとしたフュリオサ大隊長が、いかにしてその思いに至ったかを描く。
まさに映画冒頭の“事件”のきっかけとなるストーリーで、作中のフュリオサがかかえる絶望と怒りが紙面から伝わってくる。
「MAX PART 1&2」は真打・マックスが主人公となる連作。
「PART1」のプロローグでは第1作から「マッドマックス2」、「マッドマックス/サンダードーム」へと世界をリンクさせ、今回の映画に登場したイモータン・ジョーの対抗勢力「バザード」がマックスの強敵となる。
一見で観客の心をワシづかみにした(断言)、ボディ全体から鋭いトゲを生やしたハリネズミマシンも活躍するので必見! マックスの愛車インターセプターの「V8エンジン」がらみのエピソードなのでたぶん映画より活躍してます!!
最後にひかえし「The War Rig」の主人公はなんとマシン! ……いや、ある意味あの個性あふれすぎるスパルタンなメカ群はキャラクター濃いですけど!!
“主役”は映画本編でもっとも重要なマシン「ウォー・タンク」ことウォー・リグ。フュリオサの操る2000馬力・6輪駆動のヘビーデューティーなタンカートレーラーが、いかなる経緯で誕生したかを描く短編も、ピリッとくるアクセントになっている。
後半の「Mad Max Fury Road Inspired Artists」も、観ているだけで映画の興奮がよみがえるカラーアートコレクション。
巻末のアーティストコメントまでたっぷり堪能できる、価格もナットクの逸品である。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。『別冊宝島2394 仮面ライダー』や「仮面ライダードライブ公式完全読本」もやってます。