日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『マンガ サ道 ~マンガで読むサウナ道~』
『マンガ サ道 ~マンガで読むサウナ道~』第1巻
タナカカツキ 講談社 ¥560+税
(2016年1月22日発売)
『バカドリル』、『オッス!トン子ちゃん』で知られる漫画家であり、コップのフチ子の原案者でもあるマルチアーチスト・タナカカツキによるサウナ入門マンガ。
苦手だったサウナの「本当の気持ちよさ」を偶然知り、サウナ中毒になってしまった「私」が、さらなる快感を追い求めて、みずから試行錯誤を重ねたり(人体実験)、導師(グル)と呼ぶ常連たちを観察研究したり。
ついにはサウナ大使に任命され、本場フィンランドに赴くといったエピソードが綴られてゆくのだが、ここで描かれる「快感」とは、肉体的なものよりは、むしろ精神的なもの。つまり、本作が説くのは「サウナと意識の関係」にほかならない。
氏いわく、サウナと水風呂を何度か往復したあと、椅子などでゆったりリラックスしていると、血液が身体じゅうをかけめぐり、脳に酸素がゆきわたったうえに、一種の瞑想状態となり、やがて多幸感が押しよせてきて、「ととのったー!」という瞬間(サウナトランス)が訪れるという。
その描写もバキバキにトランシーで、とにかく読んでいるとジムでサウナをスルーしていた筆者も(だからこそ?)今すぐ試したくってウズウズしてくる。
一部のサウナで行われているという、サウナストーブにアロマ水をかけて水蒸気をおこす「ロウリュウ」の際、熱音師がタオルでお客ひとりひとりを扇いでいくというサービス。
いい風を送る人の際には終了後、思わず客の間で拍手が起こる――てな光景も、素人にゃ未知すぎるだけに気になって仕方ありません……!
正直、著者のハマり&気持ちよがりっぷりは、読んでいてうらやましくなるほどで。ハマれるものがある人生って楽しいな~と、つくづく思わずにいられない。
いわゆるガイドとは違うとはいえ、サウナのマナーや楽しみ方のコツは詳細に記されており、巻末には全国のお勧めサウナリストも添付。
実践にも最適の「サ道」入門書なのだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69