日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『木根さんの1人でキネマ』
『木根さんの1人でキネマ』第1巻
アサイ 白泉社 ¥600+税
(2015年12月25日発売)
「映画が好き」というのは、初対面同士の会話でわりと出てきやすいネタ。
ところがこれには、罠がある。
映画といっても、その種類は数多。観かたも数多。
なので、嗜好が合わない場合は、地雷になる。
木根真知子は、三十路独身のやり手会社員。
趣味は映画鑑賞。多くのDVDを所持し、休日は映画三昧。ディープな映画好きだ。
ただし、彼女の好みは、派手なアクション、連鎖する爆発、銃弾の嵐、人がもりもり死ぬ……そんな映画。
だから、中学時代は流行のトレンディドラマにハマれず、「オタクっぽい映画」と後ろ指さされ、「映画館ひとりで行くの? やだ寂しー」と笑われ、涙をのんだ。
大学では好きな作品を「テーマのない映画」と一蹴された。
悪いか!!!
マニアのサガというか、だからこそよりいっそう映画オタク街道を走り続け、大人になってからは、オタク臭を完全に隠して、ひとりこっそりマイナー映画をたしなむようになる。
なんらかの趣味を持つ人なら、一度は感じるであろう「趣味の話をしたい」という感情。
今でこそネットがあるから、比較的趣味の同志に出会えるようになった。
ところがネットだからこそ意見がすれ違うことは多い。地雷の踏みあいも数多。
木根さんはとても不器用なオタクだ。
さんざん同好の士をほしがるわりに、映画はひとりで観たいし、自分の趣味を人に押しつける。
本人は、まわりのわかってくれない人たちをめんどくさいと思っているようだ。しかし、まわりからみたら木根さんも相当にめんどくさい。
それでも。地雷を踏みあって、大げんかになってもいいのだ。
映画を観て、意見をぶつけあうのは、とっても楽しい。
だれかと本気で、映画の話をしたくなる作品だ。
ただしネタバレだけは勘弁な!
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」