『フィンランド・サガ(性)』第1巻
吉田貴司 講談社 \533+税
「きょうのマンガ」ではすっかりおなじみの語呂あわせ記念日。3月7日はサウナの日である。
「サ(3)」+「ナ(7)」。「ウの存在は無視かよ……」と思わなくもないが、とにもかくにも、この日は公益社団法人「日本サウナ・スパ協会」あげてのお祭りデーであり、あちこちで趣向をこらしたイベントがおこなわれる。
昨年は“37歳の人は無料招待”なんてお店もあったようなので、37歳の御仁は要チェックですよ!
サウナとは、いわずと知れたフィンランド発祥の蒸し風呂のこと。このサウナをモチーフにした日本初のマンガが『フィンランド・サガ(性)』である。
主人公は日本のプロサウナチャンピオンを自称する謎の中年男・本庄条一郎。常に汗だくでうなだれている本庄は、健康ランドはもちろん、特撮番組のオーディション会場、バッティングセンター、結婚式、コンビニ、学校……、あらゆる場所に出没し、市井の人々にこう問いかける。
「君は何に耐えている?」
ペーソスあふれるオムニバス形式だった1巻から一転、2巻ではサウナのアナザーフェイスが牙をむくバトル展開に。
そして最終巻の3巻では、胸を刺すような青春群像劇へとめまぐるしくうつり変わる。
ただし、本庄は一貫して能動的にアクションをおこすことはない。ただ、ひたすら高温のサウナで耐えに耐え続ける。
その姿を見せつけることで、失い続けるばかりの人生に、うんざりしている人たちに何かを喚起させ、学ばせてくれるのだ。
本庄から繰り出される数々の至言を噛みしめながら、たまにはサウナでゆったりと蒸されてみてはいかがだろうか。
喜・怒・哀・楽・耐。ああ、素晴らしき哉、人生よ!
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。4月4日公開・松尾スズキ監督『ジヌよさらば~かむろば村へ~』の劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」