『千一夜ドロップ』
五十嵐嵐 一迅社 \596
(2014年6月25日発売)
大都市バダグッド(誤字にあらず)の貧民街に暮らす青年ナーディルは、妹アミナと安定した生活を求めて就活中に、ハルブという男が率いる盗賊団に拉致されてしまう。
閉じ込められた洞窟の中で、「ルフ=ロック」と名乗る謎の生命体と出会ったことから、ナーディルの冒険が始まった。
太陽アレルギーの男が、見た目はタマゴの自称“太陽の化身”と繰り広げる、ギャグ多めのストーリー展開は、アラビアンナイト(千夜一夜物語)の世界というよりは、そのこぼれ話(=ドロップ)だ。
1巻完結の読後感も爽快で、良質のコメディ映画を観たような印象が残る。
なお、本単行本の本体表紙は、全体がおまけページとなっている。
そんな意味でも、最後まで楽しめる快作である。
<文・富士見 大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。担当作品は『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレットの他、平成25年度の文化庁メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業「日本特撮に関する調査報告」にも参画。