365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月1日は日本のタクシーに初めて距離メーター制が導入された日。本日読むべきマンガは……。
『ヒメタク』第1巻
細野不二彦 双葉社 ¥600+税
1938(昭和13)年の3月1日、京都市内タクシー会社が日本初のタクシー料金の距離メーター制を導入した。この年11月に全国で実施されるようになり、現代のメーター制の礎が築かれた。
何しろタクシー草創期の問題点は、料金体系がまちまちだったことだ。
この不評に応じ、大正末期から昭和初期にかけて大都市では1円均一で市内の特定地域を走る“円タク(1円タクシーの略称)”が登場。“円タク”という言葉自体はタクシーの代名詞として長く残り、当時の小説などにもよく出てくるがシステムとしては短命だった。
今、タクシー業界は不況の煽りをもろに受けているといわれるが、そんななかでもメチャクチャ稼ぐ敏腕運転手がいたりするからおもしろい。
もっともこれはどんな職種にもいえること!? 自分なりの工夫をし、常にいい仕事をしようという向上心を忘れない……そんな人の存在は必ず周囲にも影響を与えていくはずだ。
さて、そこで紹介する本作の舞台は「児見山タクシー」なるタクシー会社。
ここは大手・中小のタクシー会社からはみ出した札つきの運転手が流れつくふきだまり。総じてガラが悪く、やっかない客に暴言を吐いたりスピード違反も日常茶飯事で地元民には「ゴミ山タクシー」と呼ばれている。
この現状を一新しようと社長が直々に雇い入れた新人が、ヒロインの矢野陽芽(やの・ひめ)だ。
少女趣味な麦わら帽子に花柄ワンピース姿でやってきたうら若き美女だが、見た目に反してドライビングテクはかなりのもの。彼女がタクシーの運転手になったのは、何やらフクザツな事情がありそうで……。
陽芽が日々出会う、お客さんとの一期一会のドラマが描かれる1話完結スタイル。
あくまで物腰やわらかに接していた陽芽の瞳がキラッと輝き、彼女の本性(?)が現れる瞬間に心がときめく。
はぁ……こんな運転手さんに出会えたらいいなぁ。タクシーの運転手とはしゃべらない派の人もいるとは思いますが、ときには会話を楽しんでみるといいかも。
タクシーには乗ってみよ人には添うてみよ、なんちゃって(笑)。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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