日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『そうしそうあい』

『そうしそうあい』第1巻
りべるむ KADOKAWA ￥600+税
（2016年1月27日発売）

どうにも好きでたまらずに、どうしても目で追ってしまう人。
優等生の相馬愛実（そうま・めぐみ）にとっては、金髪ヤンキーの若松宗嗣（わかまつ・そうし）がその人だった。
そしてじつは、宗嗣のほうもまじめな愛実がめちゃくちゃ好みであり――つまり、相思相愛なのだ。

愛実と宗嗣は好き同士。根幹は、ただこれだけの話だ。
だがその表現方法が、このマンガはひと味もふた味も違う。
本書のオビの言葉が、非常に的確にそれを表現しているので、引用させていただこう。
「キレッキレの愛情表現」――言いえて妙とはこのことだと思う。

売れっ子芸人の会話のような絶妙な間合いと掛け合い、セリフの流れ。
不思議だが、おもしろいネームしか存在していないのだ。いや本当に。
ゆえにテンポよく、さくさくと読み進められ、時おり肩をふるわせるまでにウケざるをえない。

キャラ造形もおもしろく、涙もろい優等生の愛実はどこまでもかわいいのだが、根本的に何かがとてつもなくヘン。
一方の宗嗣は、照れ屋なために表面的にはかなりツン状態。しかしモノローグのデレっぷりがものすごい。
さらりとした絵柄で、淡々と綴っているように見える作品なのだが、そこには何かが潜んでいる。
読んでいるうちに、じわじわと独特の味わいが染みこんできて、気がつくとハマってしまっている――そんな読者が多数いるのではなかろうか。

登場する男キャラは、宗嗣のほかにもけっこういる。
宗嗣のヤンキー友達だち、まじめそうな眼鏡くん、物わかりのいいイケメン教師……。
乙女ゲームや従来のマンガだったら充分心を揺らすはずのキャラたちなのに、愛実はただただ宗嗣ひと筋。
いっそ小気味いいほどに、まったく目移りしないのだ。

そう、現時点ですでに最強の相思相愛である2人なのだが、はたして今後はどうなるのか。
続刊を楽しみに待ちたいと思う。

＜文・山王さくらこ＞
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系＆スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」