日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『演劇少女☆カヨコ』
『演劇少女☆カヨコ』上巻
小口十四子 青林工藝舎 ¥1,000+税
(2016年2月24日発売)
“クラス内ヒエラルキー”という言葉が使われるようになったのは比較的最近のことだが、そうしたものは昔からあった。
クラスのなかは“目立つ子”と“目立たない子”のグラデーションで分けられ……地味でおとなしくダサい子たちは、目立つ子たちにイジられないようひっそりと息を潜めて学校生活を送るのだ。
女子高に通うカヨコはまさに“目立たない子”の代表だ。
すでに自分を諦めきっていて、夢もなければ野心もない。ただ、ひたすらに退屈な毎日をやりすごすだけ。
しかし、そんなカヨコがひょんなことから演劇の道に踏みこむことに!?
発端となったのは、カヨコが“自分よりもさらに下層”と目する馬場さんの、アイドルへの憧れを綴ったポエムが、みんなの前でさらされてしまった事件。
放課後、カヨコは川べりでうなだれる馬場さんに声をかける。
「どんなにブスな子だって心の中は女の子だよ」
「女の子なら誰だってキラキラしたアイドルに憧れる資格はあると思う!!」
と語るカヨコに共感しきり、10代ならではの会話に心が熱くなる場面だ。
意気投合した結果、カヨコは馬場さんに誘われて演劇部に入部することに。
ところが3年生たちはすでに引退、2年生はゼロで実質1年生部員のみ。カヨコと馬場さん、そしてあとひとりの1年生部員は猫背で聞き取れないほど声が小さい江守さん。
じつに心もとない初心者3人組だが、演劇の本を頼りにトレーニングを開始。さらには学外の劇団にも参加し始める。
一番ダメそうに思えた江守さんはその表現力を認められ、馬場さんは先輩に恋したことも手伝ってやる気満々。2人に差をつけられてしまったカヨコは思い悩むが……。
それでもカヨコはもう“退屈な毎日”からは脱却しているのだ! 劇団のレッスン費のためにバイトを始め、知り合いも増えて、確実にカヨコの世界は広がっている。
がんばれカヨコ、下巻に期待!!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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