日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『インフェルノ』
『インフェルノ』第1巻
高殿円(作) RURU(画) 講談社 ¥600+税
(2016年2月5日発売)
「ARIA」から戦うスーツメンズマンガの登場である。
皇歴235年、旧日本領東京湾沖にある、人工島「ザ・セブンアングルズ・スター(通称セブン)」は超富裕層が住まう場所。
かつての東京は、謎の奇病の流行により「ラージ・プリズン」と呼ばれ巨大な暗黒街となっていた。
セブンに住むロシア系マフィア「コーザ・ファミリー」の御曹司・リッカ。
かつてはスラム街の住人だったが、血の儀式によってリッカの息子になったノエル。
年齢が逆転した“親子”の絆を描いた、近未来東京ブラックノワールだ。
このマンガには、いくつかのトリガーが用意されている。
マフィア同士あるいは内部の抗争、荒廃した近未来東京、奇病。今後どんな展開が待ち受けているのか期待が高まる。
ワガママ美少年とそれに付き従う青年の構図はそのひとつ。
過去のトラウマから偏食家になったリッカは、ノエルにフォアグラやフカヒレ料理を要求。違法とされているその食物を調達するため闇市に赴く。“父親”の求めるものを手に入れ、プロ並みの腕前でそれを調理。
それぞれのエピソードは往々にしてリッカの「○○が食べたい!」から始まるのは、親鳥(ノエル)と雛(リッカ)のようで構図の逆転だ。
そして何よりの魅力は、戦うスーツイケメン。
ナイフを使って華麗に敵を倒すノエル、フォアグラのうんちくを語りながら敵の肝臓を容赦なく刺し殺すノエル、シャポン(去勢された雄鶏)と鶏の屠殺方法を口にしながら相手の股間をざっくり刺すノエル……!
なんという戦闘美学。思わず「人間でいうとその部位かぁ~、なるほどウンウン!」と悪い笑顔になってしまう。
ノエルだけでなく、数多くのスーツイケメンが登場する。
その一人ひとりの襟、ワイシャツ、タイ、ジャケット、ベストを細かく見てほしい。おそらく、キャラクターに合わせ「この人物はどんなコーディネートをしているか」を考えて描かれている。
「スーツは男の戦闘服」という言葉がぴったりのマンガだ。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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