日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ラスカル』
『ラスカル』第2巻
七竈アンノ 少年画報社 ¥660+税
(2015年10月30日発売)
少年は、飢えていた。食べものにも、成功を手にするタイミングにも。
出会ったのは、マフィアのアロンソ。ハングリーな精神と、ドまっすぐな性格が気に入られ、拾われる。
つけられた名前は、「ラスカル」。意味は「ならず者のゴロツキ」、そして「わんぱく小僧」。
仁義を貫き、掃除(殺し)に手を貸し、マフィアファミリーの一員として働くようになる少年の、ピカレスクロマン。
ラスカルの行動は、気持ちいいほどヒーロー然としている。もっとも、彼のやっていることはほぼすべて犯罪。ただし「ファミリーのためにやる犯罪」と「私利私欲のための犯罪」は、まったく別物として描かれているため、彼の言動が及ぼす結果は、カタルシスに満ちている。
著者・七竈アンノ(2人組の漫画家)は、緻密な絵のハードアクションと、スレンダーな少女描写が魅力の作家。
2巻に入ってからは、半裸の少女掃除屋・サーティーンが登場。ラスカルのまわりで場を荒らしまくる。ラスカルが救ったシルヴィは、妻のようにぴったりくっついて、彼を助けようとする。コケティッシュな2人。ともに気は強く、物語を華やかにしている。
少年の成長に必要なのは、手助けする先輩と、仲間と、守り守られる女の子だ。
血まみれで硝煙のにおいこびりつく、マフィアの抗争世界。臓物飛び出る残虐な場所。
足を踏み入れたばかりのわんぱく小僧は、特別な技能は何も持っていない。
けれども彼は多くの人に信頼される。それは、彼が多くの人を信頼しているからだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」