日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『アンゴルモア 元寇合戦記』
『アンゴルモア 元寇合戦記』第5巻
たかぎ七彦 KADOKAWA ¥580+税
(2016年2月23日発売)
「元寇」を題材に、対馬に押しよせる蒙古軍の大軍を、圧倒的少数で迎え撃つこととなった島流しの武士・朽井迅三郎と、対馬の人々の活躍を描く歴史アクション第5巻。
逃げ場などどこにもない島に追い詰められ、知略と武勇をフルに活用して元軍と戦う鎌倉武士……というシチュエーションだけでも燃える話なのに、前巻の第4巻では、壇ノ浦で入水したはずの安徳天皇が登場し、一気に伝奇的な要素も強まった。
元軍が、モンゴル、高麗、そして女真族という様々な民族の連合であるのに対し、迅三郎たち日本側も、白村江の敗退以来、ひそかに外寇に備えてきた「防人」の末裔たちという「別の日本の民」との共闘を選び、戦いは複数の“大陸”VS複数の“日本”という色を帯びてきた(新たな頼もしい戦力として加わった海女さん戦士軍団の活躍は、たいへんサービス満点である)。
対馬という孤島を舞台としつつも、1巻ごとにむしろスケールを大きくしていく本シリーズ。
戦記マンガのみならず、史実に隠された日本史を描く伝奇マンガとしてもこれから期待していきたい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas