365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月1日は売春防止法が施行された日。本日読むべきマンガは……。
『三丁目の夕日 夕焼けの詩』第43巻
西岸良平 小学館 ¥505+税
4月1日は新年度が始まる日である。
そのため、この日に施行された法律は数多い。1958年に完全施行された「売春防止法」も、そのような法律のなかのひとつである。
第二次世界大戦後、GHQによる公娼制度廃止指令によって日本の公娼制度は名目上廃止された。
しかし、なかば公認のようなかたちで、一部地域では引き続き売春が行われていた。飲食店(カフェや料亭)として許可を得て営業した場所を「赤線」、無認可のまま営業を行った場所を「青線」と呼ぶ。
しかし、この売春防止法の施行をもって赤線・青線は廃止された。
この赤線地帯を題材にして小説を書いたのが、吉行淳之介である。
『驟雨』、『原色の街』など赤線を舞台とした作品を数多く手がけ、『驟雨』で第31回(1954年上半期)芥川賞を受賞している。
のちに吉行は『夕暮れまで』で中年男性と若い女性の肉体関係を描き、そのタイトルにちなんだ「夕暮れ族」という言葉が流行語にもなった。吉行淳之介は、昭和の文学史に名を残す流行作家であったのだ。
この吉行淳之介の名をもじったキャラクターが登場するのが、西岸良平『三丁目の夕日 夕焼けの詩』である。
子ども向けの冒険小説を手がける小説家・茶川竜之介(ちゃがわ・りゅうのすけ)は、天涯孤独になってしまった少年を引き取って共同生活することになるが、その少年こそ「古行淳之介(ふるゆき・じゅんのすけ)」と吉行淳之介をもじった名前なのだ。
淳之介少年は茶川先生を尊敬して、じつの父親のように思っており、将来は自分も小説家になりたいと願うようになる。単行本第43巻に収録されている第14話「冒険小説」では、淳之介少年が冒険小説のアイデアを出すと、大スランプ中だった茶川先生はそのネタをアレンジして小説を執筆。これが好評を博す。
ちなみに茶川×淳之介のコンビは実写映画『ALWAYS 三丁目の夕日』、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』、『ALWAYS 三丁目の夕日 '64』にも登場。3作とも共通して茶川竜之介役は吉岡秀隆、古行淳之介役は須賀健太が務めた。
今年の4月1日にも「女性活躍推進法」や「改正障害者雇用促進法」などが施行される。
過去に施行された法律に目を向け、その成立までの歴史的経緯や往時の文化に目を向けることも大切なことなのだろう。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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