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『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』第10巻 福本伸行 【日刊マンガガイド】

2016/04/03


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』


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『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』第10巻
福本伸行 講談社 ¥571+税
(2016年3月4日発売)


「限定ジャンケン」「裏パチンコ『沼』」「地雷ゲーム 17歩」等様々なギャンブルに挑んできたカイジ。
今回彼が戦うのは、トランプを1枚ずつ出しあい勝敗を決する「ワン・ポーカー」。対戦相手は、帝愛グループの御曹司・兵頭和也。
和也の父・和尊は「限定ジャンケン」等のギャンブルの元締でもあり、カイジには因縁深い相手となる。

「ワン・ポーカー」とは、こんなゲームだ。
カードが2枚配られ、そのなかから1枚を選ぶ。勝敗を決するのは数の大小のみ(Aが一番強いが、Aは2に負ける)で「役」はない。
一見運任せのゲームに思えるが、そこは〈カイジシリーズ〉、そんなに単純ではない。

カードは「マザー・ソフィー」と呼ばれるマシンにより配られるのだが、勝負前に手持ちのカードの情報が「UP」「DOWN」のランプで示される(2~7は「DOWN」、8~Aは「UP」)。手持ちが3と7なら「DOWN」が2つつき、6とQなら「UP」と「DOWN」が1つずつ点灯する。
これで得た相手の手持ちの状況を見たうえで、自分が何を出すか決断する訳で、これにより運だけではない「駆け引き」の要素が加わってくる。

さらに、通常のポーカーと同様、レイズ(賭け金を上げる)で相手を下ろすこともできる。自分のカードが3で、相手がKでも、賭け金を上げて下ろしてしまえば勝ちなのだ。
この「駆け引き」がワン・ポーカー編の特徴で、お互いがカードを出して(レイズがあったりなかったりして)オープンして終了、というだけの1回のゲームが数話もかけて描かれるのだ。
勝負が決するまでの間、カイジ(あるいは和也)は、相手のカードをああでもない、こうでもないと予測して懊悩するのだが、この悩みぶりがじつにおもしろいのである。

ところで「ワン・ポーカー」で賭けられるのは「ライフ」と呼ばれる人形。その1体は正社員サラリーマンの生涯賃金に相当する2億円(まさに人生をかけているわけだ)。
そして、このゲームではお互いのライフ=人生観も勝負の対象となっている。
ギャンブルで稼いだ金を、仲間を助けるために投げうってきたカイジ。和也は、そうしたカイジの行動を「偽善」と決めつけるが、自分の価値観と異なるカイジの行動に足元をすくわれることもある。
カイジと和也、どちらの人生観が勝利を得るのかも気になるところである。

1張り2億円の「ワン・ポーカー」。カイジは、「地雷ゲーム 17歩」で獲得した約4億円を元手に4ライフで参加し、和也は20億円を張った。
手持ちが少ないぶん、和也に力任せのレイズをされると勝ち目がなくなる不利は承知のうえで、カイジは総額24億円をめぐる「身を焼く苦行」(by和也)に身を投じた。
そして、一時はライフ0まで追いこまれるが、その逆境からみごとな復活を果たす。

一方、勝っても負けても饒舌であった和也だが、第10巻の中盤から無口になり、表情がなくなってしまう。
心理描写もないため、カイジだけでなく読者も豹変した和也の真意が読めなくなる。

勝負を捨ててしまったのか、それともなんらかの伏線を秘めた「擬態」なのか?
その真相が明らかになるだろう次巻が待ちどおしい。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。『2016本格ミステリ・ベスト10』(原書房)で国内本格ミステリ座談会とミステリコミックの年間総括記事等を担当。また現在発売中の、「ミステリマガジン」5月号(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。

単行本情報

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