日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『エルドライブ』
『エルドライブ【ēlDLIVE】』第5巻
天野明 集英社 ¥619+税
(2016年3月4日発売)
九ノ瀬宙太(ここのせ・ちゅうた)は、家庭科が得意なおとなしい中学生。しかも、ひとりごとをつぶやくクセもある、ちょっと変わった男の子だ。
そんな宙太が、宇宙警察・エルドライブにスカウトされて、宇宙犯罪者たちと戦う――というSF冒険活劇が本作『エルドライブ』である。
著者は、『家庭教師ヒットマン REBORN!』を生み出し、アニメ『PSYCHO-PASS』のキャラクター原案も手がけた天野明。
天野が描くキャラクターは絶品で、特に宙太の同僚となる美少女刑事たち――其方美鈴(そのかた・みすず)、ベロニカ、ニノチカ――は非常に美しい。
その一方で、宇宙人たちは独特のフォルムで読者に強烈なインパクトを与える。
そして、コミックスはオールカラーなので少女たちの美しさや、宇宙人犯罪者のグロさ、宙太の同僚となる宇宙刑事たちのセンス・オヴ・ワンダー感が映えるのである。
もちろん、単に絵がきれいというだけでなく、キャラクターの個性づけもしっかりしている。
宙太の同僚(同級生でもある)の其方美鈴は、戦闘力の高いクール・ビューティーで、当初は宙太のことをバカにしていた。しかし、宙太に助けられたりもして、徐々に意識し始めるようになる。活劇の背景で描かれる、美鈴と宙太のほほえましい交流も読みどころである。
じつは、宙太にはモニタリアン(共生体)と呼ばれる共生生物がついていた。
宙太にも、その姿は見えておらず、声が聞こえるだけだった(その会話が他人にはひとり言に見えるわけだ)。しかし、友人を助けるため宙太が宇宙人と対決した際に姿を現わし、その能力で宙太を救ってくれたのだ。
宙太は、自らが「ドルー」と名づけたモニタリアンとともに、犯罪組織と戦う。異色のバディものと言ってもよいだろう。
『エルドライブ』は、そうしたいろんな楽しみどころがある作品なのである。
第5巻では、「キング」と呼ばれるボスに率いられた謎の集団が登場して、地球がその標的となる。
宇宙人による、地球での連続爆破事件の解決に宙太たちは奔走する。
その一方で、宙太たちのベースともいえる宇宙警察署・ジャンルノR号ではとんでもない事態が発生して……という強烈なヒキで第6巻へと続くのである。
ちなみに、エルドライブは2017年のTVアニメ化が決定した。制作を担当するのは『おそ松さん』などのstudioぴえろなので、こちらも楽しみである。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)で国内本格ミステリ座談会とミステリコミックの年間総括記事等を担当。また現在発売中の、「ミステリマガジン」5月号(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。