日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『グランメゾンむらさきばし』
『グランメゾンむらさきばし』第3巻
南Q太 芳文社 ¥819+税
(2016年3月7日発売)
三鷹にあるアパート「グランメゾンむらさきばし」を舞台に、アラフォーのシングルファーザーの青亀と同じく子持ちの美女・美穂の恋の行方を描いた本作も、ついに完結!
マイペースな青亀と典型的な小学生男子の光、おっとりしつつも毅然とした強さを持つ美穂と一時はクールだが心優しい息子の竜丸、青亀に思いを寄せる貴子、青亀の友人でライバルとなる赤星くん。典型的な世話すぎおばさん&女子学生の藤井親子。
料理上手なフランス人語学教師・メルセデス、陰気なようでじつは社交好きの漫画家・胡桃沢など、むらさきばしの愉快な住人たち。さらには青亀と美穂の元パートナーも巻きこんだ人間模様は、複雑ながらもあたたかな思いやりに溢れていて、ほっこりいやされる。
これぞ南Q太! なヒリヒリ感はないが、ほのぼしたタッチのなかにも、一筋縄ではいかない人間の心の機敏や成長がちゃんと描かれているのは、さすが。
なかでも美穂が別れた旦那と再会するくだりの描写には、たとえ最終的には別れたとしても、2人が築きあげた関係やそれまでの時間は決して無駄ではないのだ、と気づかされる。
15年後の後日談で、青亀と美穂の歩みを匂わせるラストも秀逸。
『めぞん一刻』や『最後から二番目の恋』のファンにもおすすめしたい、じれったくもほほえましく心にしみる、大人のための恋愛マンガだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69