日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『惑わない星』
『惑わない星』第1巻
石川雅之 講談社 ¥750+税
(2016年3月23日発売)
菌の擬人化という異色の設定と現在の科学ブームに先駆けた科学うんちくネタで、一大ブームを巻き起こした『もやしもん』の著者の新連載。
アニメキャラに彩られたドリーミーな“内”の世界と“内”を維持するために存在する荒廃した“外”の世界で形成された、近未来の日本。
すべてを諦め、ただ任務を淡々とこなして日々をやり過ごしているS沢と及川の前に、謎の少女たちが次々に現れる。
彼女らの正体は、なんと瀕死状態に陥った地球を救うために呼ばれた太陽系の惑星だった――。
そんな設定からしてキテレツ極まりないのだが、太陽系随一の過酷な環境下にいた金星が地球に来て「なんて軽くて心地のよい空気」と嬉々としたり、表面重力が地球の3分の1強の水星が重力で動けなかったり……。
キャラクターのディティール設定にも、ちゃんと惑星~科学ネタが絡んでいて、そのウンチクをいちいち解説しながら物語が展開されてゆくあたり、さすがの石川ワールド!
あまりにマニアックかつ膨大な情報量に、ときとして読み進めるのがつらくなる場面もあるのはあるが、そこをぐっと読み進めれば、ほかのマンガでは得られない唯一無ニの知的好奇心をくすぐる読書体験が得られる。
壮大すぎる物語だけに、物語がどう転がってゆくのか興味は尽きない。
宇宙と人間の壁を超えた「愛は地球を救う」のか? 乞うご期待!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69