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今回紹介するのは、『闇に這う者 ラヴクラフト傑作集』
『闇に這う者 ラヴクラフト傑作集』
田辺剛 KADOKAWA ¥680+税
(2016年3月25日発売)
田辺剛によるラヴクラフトのコミカライズは『異世界の色彩』、『魔犬』に続いて本作が3冊目。
SF的な要素を含んだ怪奇小説や幻想小説をものしたラヴクラフトは、ホラーファンには有名な作家だ。
彼の作品にたびたび登場する架空の魔導書「ネクロノミコン」の存在は多くのクリエイターに影響を与えている。
ラヴクラフトの小説からにじみ出る禍々しい闇、重苦しい不安を田辺剛はしっかりと体感させてくれる。原作ファンもきっと満足するはずだ。
タイトル作「闇に這う者」の主人公、ロバート・ブレイクは作家兼画家。
とある街の古い屋敷に移り住んだロバートは、窓から見える丘の上の教会に心ひかれるようになる。
その教会は真っ黒であり……周囲を飛びまわる鳥たちはそこに結界でもあるかのように避けて飛んでいるのだ。
ロバートはある日、意を決して教会を目指す。しかし、近隣の人々はみな口をそろえて、あの教会に近づこうなどと考えてはいけないと言うのだった。
好奇心に抗えず教会に足を踏み入れたロバートは、新聞記者が残したとおぼしきメモと、暗号が書かれた紙片を発見するのだが……。
ドーンとびっくりさせる現代のホラーとはまた違う、じわじわ迫りくる怪異の妙味。
静けさのなかで自分の心臓の鼓動の高鳴りだけが聞こえてくる……そんな緊迫感を存分に味わえるのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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