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『透明なゆりかご』第3巻 沖田×華 【日刊マンガガイド】

2016/05/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『透明なゆりかご』


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『透明なゆりかご』第3巻
沖田×華 講談社 ¥429+税
(2016年4月13日発売)


高校時代(当時は1997年)に準看護師の見習いとして、個人クリニックでアルバイトをした著者の実体験にもとづき、産婦人科のリアルを描いて話題沸騰中の『透明なゆりかご』。

第3巻では、既婚で家族のサポートもある妊婦のエピソードが多めだが、それでも妊娠=幸せと断言できない状況もままある。
胎児の命にかかわる重い障害が見つかったり、妊婦のほうが出産に大きなリスクをともなっていたり、よかれと思っていた家族の行動が本人には大きな負担を強いていたり……と、様々な困難が新しい命とともにある。

ふくらんだお腹には、希望だけでなく、不安もつまっている。
医療の手を尽くしても悲しい結果に終わることもあるが、かといって苦悩だけではない。
赤ちゃんが生まれ出て、親子として過ごした幸せな時間は、決して消えない宝物だ。

なかでも、お産と中絶をどちらも手がけるクリニックの院長先生の、祈りのような思いが印象に残る。
葛藤を抱きながらも、中絶を悪ととらえず、次へ託された命とする考え方は、高額な(および、脅迫まがいの)水子供養ビジネスや迷信などよりも、よほど多くの女性を救ってくれる。

また、実習先の総合病院にて、年配の守衛さんが置き去りにされた子どもを守る話は、子どもの無邪気さが涙を誘うが、虐待事件が起こるたびに声高に叫ばれる「育てられないなら産むな」との声に対し、違う形での救済が見えてくる。

余談だが「あとがきにかえて」を読むと、著者の「やらかし」のために、この作品自体が世に出られない可能性もあったようだ。
それを食い止めた編集者という仕事は、マンガにとっての産科医みたいな存在なのかも?



<文・和智永 妙>
『このマンガがすごい!』本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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