『看護助手のナナちゃん』第1巻
野村知紗 小学館 \619+税
5月12日は「国際看護師の日」。看護師の社会への貢献を称える目的で、国際看護師協会により1965年に制定された。
ナースにとってのシンボル的存在であるナイチンゲールが1820年のこの日に生誕したことに由来する。もともと日本では「International Nurses Day」→「国際看護婦の日」と称していたが、2002年3月に看護婦の呼称が看護師に変更されたことにともない「国際看護師の日」に改称された。
作者の野村知紗は『とろける鉄工所』でおなじみの漫画家・野村宗弘の妻。
もともとマンガに関しては素人だったが、夫の作業を手伝うための練習としてマンガを描き始めたのが契機となった。広島在住時代に看護助手として働いた経験をもとに『看護助手のナナちゃん』を描きあげ、第20回黒潮マンガ大賞準大賞を受賞。それが「ビッグコミックオリジナル」での連載に繋がっていくのだから、人生何が起こるのかわからない。
看護助手はナースではなくナースエイドと呼ばれる。
看護師や准看護師と違って資格はいらないが、医療行為を行うことはできない。看護師の指示のもと、患者の清拭やシーツの交換、トイレや入浴のサポート等が主な作業だ。
そして、なによりも大切な仕事が患者とのスキンシップ。ナナちゃんのような看護助手が、心細い患者にとっていかに精神的な支えとなっているのかがよくわかる。
第3巻では元看護師長だった沢村さんという末期がんの入院患者が登場する。仕事に心血を注いできた独身女性で、お見舞いにくる人もほとんどいない。そんな彼女がナナちゃんに心を開く。仕事に対するアドバイスを送り、若い頃の恋話を披露し、厳しく指導して辞めていった看護師たちのことを想って自責の念にかられるのだ。
仕事に追われてテレビとは無縁の生活だった彼女が、朝ドラの続きを楽しみにしながら「早く明日がこないかな」と言うエピソードにジーンときた。
患者の“死”という現実からは逃れられないが、昨今の病院モノのように踏みこみすぎないところがいい。
過酷な労働の中でささやかな幸せを見つけていくナナちゃんの姿を観ているとほっこりした気分になる。
広島弁がとびかったり、患者の多くがカープファンだったり、ご当地モノとしての側面も楽しい。
恐ろしいほどの高齢化社会が待ち受ける我が国において、医者と同等に求められている人材である看護師や看護助手。
肉体的にも精神的にも重労働である看護職に就くすべての人たちに、最大限のリスペクトを送ろうではないか。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。出身地の立川を舞台にした映画『ズタボロ』(橋本一監督/公開中)の劇場用プログラムに参加しております。観てね!
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